にゃんぷー

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel II. lost butterflyのにゃんぷーのレビュー・感想・評価

4.2
鑑賞中ずっと楽しかったのだけど、振り返ってみるとまだまだエモーションを抑制している感じがする。きっと、デカい戦闘・見せ場が固まっている次作へのタメなのだろう。尺に収まるかちょっと心配。
戦闘シーンやエフェクト作画のヤバさは言わずもがななので割愛。それよりも今作の真価は緻密な演出にこそある。士郎、桜の心情描写は勿論なんだけど、慎二やアーチャーなんかも印象的。慎二の「お前らどこ見てんだよ」の神谷さんの演技とかマジ痺れる。橙炎の中で桜を見捨てるアーチャーと紫炎の中で士郎を助けるアーチャーの対比も素敵だ。それと、『Fate/Zero』からの後付けだけどアニメ版の方が藤ねえが素敵な大人だ。[UBW]12話の切嗣への墓参り然り。この未亡人感。良い原作補完。
基本的に〈士郎/桜〉の位置関係が一貫している。告白シーンとか街灯の境界線を士郎が軽々超えてくるからカッコ良い。一方、イリアと居る時は〈イリア/士郎〉。手を繋ぐシーンの対比。

今回は桜が孵化し、蝶(本当の姿)へと変貌するまでの話だと思うのだけど、自分は勝手に衛宮家はサナギのモチーフだったのではと考えてる。(まあ間桐家もそうなんだけど)
本作では衛宮家が全体的に暗く、閉塞感があって、それでいてダッチアングルが各所に挟み込まれていて、どことなく息苦しさを醸し出している。桜にとって、衛宮家は安息の地であると同時に殻でもあったのだ。(桜が士郎を家から出したくなかった理由は、単なる心配だけじゃなく、自分が家から出られないことからくる嫉みもあったのだと思う。防衛機制で言うところの投射(?)的な。いかにもヤンデレだ。)
そして追い詰められた桜は我慢を辞め、感情を爆発させ、家出(孵化)し本当の自分へと生まれ変わる。『Heaven’s Feel』って詰まるところ、今までの反動で激烈な反抗期を起こした桜の血生臭い家出物語だと今更ながら思った。

あとホラー演出も良かった。原作ではテキストだけで不気味にみせていたあのシーンが、不思議の国のアリスよろしく可愛い(?)シーンへと化けていた。無音の演出も息を呑んだが、結構多用されていたのでもうちょい回数絞っても良いかなと思わなくもなかった。

長くなったけど最後に一つだけ。桜の背中の描き込み!!!
にゃんぷー

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