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長江 愛の詩のardantのレビュー・感想・評価

長江 愛の詩(2016年製作の映画)
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『あしたはどっちだ、寺山修司』を観るため、本棚から、古い彼の本を引っ張り出して読んでいたら、彼は、ヴィヴィアン・リーの『哀愁』の予告篇を17回観て、17回泣き、待ちに待った本篇を観た時は全然泣けなかったという文をみつけた。
私も、子供の頃から、予告篇を観るのが好きだった。妄想癖のある身に、その映画のエッセンスが凝縮した予告篇は、想像を脹らませるとっておきの材料だった。ときには、その映画の主人公に自らを投影することもできるのだから。
この作品の予告篇は完璧だ。音楽、映像、キャッチコピーのどれをとっても。「一冊の詩集に導かれて、長江を遡る、遥かな旅へ」、「詩に記された河沿いの街をたどって、行く先々で必ず出会う 君」、「これは誰の記憶」、「河が遡る。時が巻き戻る。」、ああこれだけで、その先に、「どんなに美しくも哀しい」、いや、「どんなにも切なく美しい」物語が待っていることだろうと思うだけで、胸が高鳴る。もし、予告篇だけのアカデミー賞があったなら、文句なく作品賞を授与したいほど。
さて、本篇の方はどうだったのだろう。
前日、イ・ビョンホンの『ターミナル』で、大きな期待を裏切られた私は、機嫌が悪く、だから、その二の舞いだけはごめんだった。
長い長い「長江」の旅だった。水がある風景は、心がなごむ。映像は圧倒的に美しい。
ただ、私が期待していた「美しく、切なく、哀しい」物語はそこにはなかった。
予告編だけで、やめておけばよかったのに。

p.s.
時間が経つにつれ、また観たくになってきたので、評価を上げました。
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