せーじ

生きのびるためにのせーじのレビュー・感想・評価

生きのびるために(2017年製作の映画)
4.7
126本目は、前々から観よう観ようと思いつつ今日まで観るのを先送りにしてしまっていたこの作品を、この機会に。

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」などを手掛けたアイルランドのアニメスタジオ「カートゥーン・サルーン」が制作したアニメーション。
タリバン政権下のアフガニスタンで、父親が無実の罪でタリバンに連行され、稼ぎ手がいなくなってしまった家の少女が、家族のために男装をして日銭を稼ごうとするが…というお話。

井戸に水を汲みに行くことですら、命を懸けないといけないというような、問答無用、文字通り地獄であるとしか言いようのない環境を克明に描いていて、何度も何度も胸がえぐられるような思いをした。だが、この作品が凄まじいのは題材のハードさそのものだけではなく、それに語り口が酔っ払わずにきちんと重厚な人間ドラマとしても描ききっているところと、アニメーションならではの表現を妥協無く追求しているところだろう。女性差別や、女性蔑視に対する安易なアンチテーゼ一辺倒で作品をまとめ上げているのではなく、虐げている男性側も実は…という見せ方を、秀逸な演出でさりげなく見せているというのがスゴい。
また、主人公の少女が創りあげた「寓話」が語られていくシーンもアニメーション表現としてとても見ごたえがあったし、後半、少女自身が少女の兄を依り代として「寓話」そのものを「現実」と重ね合わせていくような展開が素晴らしい。悲しみや苦しみを創作表現に昇華していくことの大切さと、それによって社会を救おうとしていきたい、そうしていくのだという「強さ」が力強く描かれていて、最後まで目が離せませんでした…

現状日本国内ではNetflixでしか観ることができませんが、現在もなお続く問題のひとつを考える題材として、全人類必見の一作になっていると思います。
ハードですけど、ゴア描写などはうまく演出で残酷過ぎないように描かれていますし、親子愛や友情も重層的に描かれている、価値ある傑作になっているのではないでしょうか。
大切な方と、ぜひぜひ。