Yoshishun

恋は雨上がりのようにのYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

今年は『ペンタゴン・ペーパーズ』『トレイン・ミッション』といった洋画の試写会しか当たっていませんでしたが、比較的倍率の高かったであろう本作の試写会にまさかの当選、雨上がりのようなじめ~っとした天気の中、行って来ました。

ちなみに、原作は未読です。


ファミレスでバイトをする高2の女子高生、橘あきら。ケガにより陸上選手としての夢を閉ざされた彼女の心の支えとなったのは、バイト先の、バツイチで、子持ちで、頼りない45歳の店長だった。

同名コミックを『帝一の國』の実写化を成功させた永井聡監督が実写映画化。夢を閉ざされた主人公・橘を小松菜奈が爽やかに演じきる。そして相手役には、日本一ダメ男の役が似合うといっても過言ではない、大泉洋。いつ猟銃を取り出すかそわそわしたものだ。

陸上部顔負けの綺麗なフォームで走る女優魂に圧倒、疾走感のある冒頭はたまらない。小松菜奈だけでなく、ワンカットで滑らかに映すカメラワークも大胆で惚れ惚れする。

最低限の説明、特に映像で大体の状況を把握できる視覚的な面白さ。主人公の心情を表したような雨も印象的で、辛いとき、悲しいとき、そして人生の転機を迎えたとき、常に雨が降っていた。そんな彼女の心に降る雨にそっと傘を差し出した店長の温もりが彼女を変える。橘がなぜ店長に恋をしたのか?そこに理由付けがされているから後の展開に説得力が生まれている。

劇中はユーモアも豊富で、映画館では幾度となく笑い声が聞こえていた。しかもそこには店長の存在が関係していることが多く、観客にもそっと寄り添う優しさが画面から滲み出ていた。

旬な若手俳優の共演からベタな学園恋愛ものと思われる方も少なくないはず。しかし、夢を諦めた二人の大人になれない純愛物語であり、年齢の垣根を超えた爽やかさが漂う。普通に考えれば、劇中の登場人物の台詞の如く「キモい」と思われるに違いない。しかし気持ち悪さは微塵もなく、純粋な恋愛の経緯を笑って、泣いて、楽しく見届けられる。ラストカットの小松菜奈の表情は、年の差恋愛への偏見に対する彼女なりの答えであり、そのやるせない表情に切なさともどかしさが募る。

さて、難点というか気になったのは、劇場公開されても指摘されるかもしれない結末。言ってしまえば、尻切れ感が凄い。原作の最終回と完全に同じものではないみたいだが、突然始まったこの恋愛物語が突然終わりを告げてしまう。寂しくなるより、恐らくこのあっさりとした結末に戸惑うはずだ。自分も最初はかなり戸惑った。

しかし、数日経てばあの結末にも納得がいくはず。あくまで、純粋な恋愛を描いた作品。確かにあそこで終わるべき、というか終わらないといけないのかもしれない。夢への再挑戦をかけた最初のステップ、それがあの決断だったのかもしれない。

またよくよく考えれば、大泉洋演じる店長の発言は、中々のパワハラもの。リストラに近くて、それを爽やかに言い放つ店長も中々のもの。

一部、爽やかながらも無理な設定や展開を誤魔化しているようにも見えるのが残念なところ。漫画が原作なので漫画的な演出を狙ったのはわかるものの、リアルで繊細な恋を描いていただけに、少々浮いてる印象。


28歳差の爽やかで、純粋な、恋愛物語。某アイドルのわいせつ行為が話題となっている今、歳の差に対する偏見を打破する作品が登場した。ある意味タイムリーな作品ですが、難しいことは考えず、雨上がりのような清々しい気持ちで観に行ってみてはいかがでしょうか?

主題歌である"フロントメモリー"まで見所は沢山、漫画実写化作品としては及第点ともいえる中々の良作。
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