ミヤザキタケル

恋は雨上がりのようにのミヤザキタケルのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
4.4
恋は雨上がりのように
眉月じゅん原作マンガの実写化。

陸上部のエースとして活躍していた高校2年生の橘あきら(小松菜奈)は、右足アキレス腱に負った怪我が原因で陸上の夢を断たれてしまう。
失意の最中、雨宿りのために立ち寄ったファミレスで店長の近藤正己(大泉洋)が発した言葉に励まされるあきら。
その出来事をキッカケにファミレスでバイトを始め、自分より28才歳上でバツイチ子持ちの45歳 近藤への恋心を募らせていくのだが…。
雨宿りから抜け出せずにいた2人の恋模様・現実と夢の狭間でもがき続ける姿を通し、雨上がりに差す陽射しのような煌めきを描いた作品だ。

制服姿が絵になる小松菜奈ちゃんに目を奪われたのも束の間、全く想定していなかったスピーディーでセンセーショナルなOPにガシッと心を掴まれた
この作品は全力で駆け抜ける物語なのだと、時に躓きながらもガムシャラに突っ走るのだと、ものの数分もしない内に理解させられた
あっという間に作品世界へと引き摺り込まれた。

人生にも恋愛にも明確なルールは無い
どれだけの年齢差であろうと、そこに愛があるのなら何だってアリだと思う
が、現実はそうも言っていられない
現在31歳のぼくはさすがに未成年とは付き合えない
間違いなくドキドキしちゃうけど、好きにだってなっちゃうだろうけど、恋愛云々以前にリスクばかりが頭をよぎる
本当は傷付くのが怖くて向き合えないだけなのに、上辺の言葉ばかり並べて相手に原因を押し付ける
そのくせ、あんなにも可愛い女子高生に好きだと言われたら、あんなにも真っ直ぐに想いをブツけられたら、あんなにも執拗に迫られたら、十中八九落ちてしまいそうな自分もいる
そんな自分の卑しさを自覚できるからこそ、近藤がどう対応していくのか目が離せない
あきらの片思いがどんな結末を迎えるのか気になって仕方が無い

恋愛映画として楽しめるのはもちろんのこと、大爆笑もできてしまう
そして、夢を叶えられず足踏みしている者ならば、既に夢を手放してしまった者ならば、きっと胸揺さぶられてしまう
彼女達の年齢差のように、若かろうが中年だろうが関係無い
多くの人の心に届く作品だと、ズブ濡れになった心に傘を差してくれる作品だとぼくは思う。

一番最初に思い描いた夢を叶えられた人はどれだけいるのだろう
自分のやりたいことを生業にできた人はどれだけいるのだろう
多くの人が挫折し、どこかしらで軌道修正していると思う
2番目か3番目にやりたかったことにシフトするか、生きていくためにこれっぽっちも興味の無いことをしている人だっているだろう
こんなはずでは無かったと、今の自分は本当の自分では無いと、あの頃の自分はスゴかったのだと、目の前の現実から目を背けて生きている人の方が多いと思う
そんな自分に気付かぬフリをして、騙し騙し生きている人の方が多いと思う
ぼく自身もその1人
あなたの“今”はどうだろう

人生何が起こるか分からない
本来追い求めていたモノとは異なる幸せの在り方に巡り会うこともあるだろう
それを諦めや妥協と呼ぶ人もいるかもしれないが、当人が幸せを噛み締められているのであれば誰にも口出しする権利は無い
だが、巡り会うためには条件がある
それまで追い続けていた夢や幸せの在り方に別れを告げること
中途半端に投げ出したままであれば、いつまで経っても未練が残る
それはつまり、今目の前に在るモノに全力で向き合えないということ。

幼い頃から打ち込んできた陸上から離れ、恋に重きを置くあきら
小説家になる夢を捨て切れぬまま、ファミレス店長として働く近藤
ズブ濡れのまま身動きが取れずにいた2人だが、次第に互いの存在が傘と化していく
濡れることは無くなっていくが、傘を持つ手は常に塞がれ、雨が降り続けている限りは自由に身動きが取れない
心に降る雨自体が止まない限り、何事にも真正面から向き合えない

続ける理由より、諦める理由の方が見つけやすい
より高みへ近付けば近付く程に、その度合いは増していく
キッチリ諦められれば良いが、淡い期待は捨て切れない
明確な努力やアクション無くして現状は変えられないと分かっていながらも、一発逆転のチャンスが訪れることを、誰かが引き上げてくれることを求めてしまう
でも、他人がしてくれるのは傘を差してくれるところまで
ズブ濡れになってでも突っ走れるだけの根性は、雨雲さえ吹き飛ばしてしまう圧倒的な熱量は、自分の心の中からしか生み出せない
そんな自分に巡り会うまでの岐路を、心の雨上がりが訪れるまでの葛藤を、この作品はとても丁寧に描いていた。

物語はあそこで終わるけど、傘を手放した2人のドラマはあそこから再び始まっていく
ぼくはあの先をもっともっと観ていたかった
大抵の場合は思い過ごしだけど、実人生において何かを変えられそうな気持ちにさせられる
少なくとも、一歩踏み出すためのキッカケを与えてくれる
こんなにも駆け出したくなる映画に出逢えたのは久しぶり。

ぜひ劇場でご覧ください。

青春★★★★
恋 ★★★
エロ★★★
サスペンス★★★
ファンタジー★★
総合評価:A