スパイダーマックス

恋は雨上がりのようにのスパイダーマックスのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
4.0
凄く映画映えしそうな作品だなーと思って原作を読んでた身としては、今回の実写化はかなり満足できるものでした!キャストが発表された時点で原作ファンの心をガッチリ掴んだのは大きいですね。ナイスキャスティング!

主人公 橘あきらを演じた小松菜奈さんの出演作はバクマンとディストラクションベイビーズを観たことあるだけで、正直ちょっと怖そうなイメージ(クールビューティー的な意味)だったんですが、番宣見てる限りでは印象が結構変わりました。普通に感じのいい、面白そうな女優さんですね。溺れるナイフも観てみようかな。
とにかく、ちょっと怖いイメージの彼女が主人公の橘あきらを演るのは大成功でした。凄くチャーミングだし、モデルをやっているだけあって長い足による走り姿が格好いいし、彼女の演じるあきらをバッチリ好きになれました。何かに気づく時の表情が個人的には凄く魅力的!これからfanになるかも!

大泉洋さんはもう、言わずもがな流石ですね。ただ、大泉さんは普通に魅力的すぎる笑。枯れたオッさんには見えないかな。でも安全そうには見えるからやっぱり合ってる配役だと思います。

他にもあきらの親友の喜屋武はるか役の清野菜名さんも良かった!あきらの事を気にかけながらも、不器用だから真っ直ぐにしかぶつかっていけない感じが凄く出てたし、あきらに陸上復帰を促すライバル的な立ち位置の倉田みずきを演じる山本舞香さんもいいですね!目力があるから、みずきの自信家な部分や、生意気で挑発的な態度がバッチリハマってました。

役者さん達の魅力と役との相性の良さがこの映画の魅力の大部分を担ってると思います。

基本的な話の設定としては17歳の女子高生がバイト先の45歳のファミレス店長に片思いをするっていう話の導入なんですが、僕はこの原作やアニメ、そして今回の映画を観ている間、ある映画のタイトル(邦題)が頭に浮かんでました。それはデレク・シアンフランス監督の「光をくれた人」です。映画の内容は全然違いますが、「恋は雨上がりのように」に自分が別のタイトルをつけるなら「光をくれた人」がハマるんじゃないかなーと感じました。
本作の主人公 橘あきらにとって店長は、冷たい雨と絶望の雲がかかった心に暖かい陽の光を射してくれた人であり、逆に店長も、あきらの持つ真っ直ぐさ・純真さ・ひたむきさといった彼女の輝きにあてられて自分の中に眠っていた様々な感情や情熱が蘇ってくるというとっても僕好みのお話!

もしかしたら、恋心を抱くという点においては、あきらにとっては近藤店長はタイミングが良かっただけだったのかもしれないというバランスも含みつつ、でも近藤店長だからこそ彼女を救えた事は間違いないとも思えて非常に良いバランスの二人だなーと思いました。

個人的にこの映画の評価を一層高めたのが主題歌フロントメモリーの存在!川本真琴さんのバージョンも勿論いいけど、鈴木瑛美子さんが歌う本バージョンは更に最高でした!声がとにかく良い。伸びやかで聞いてて気持ちがいいです。まさにご機嫌チューンなアップナンバーで、不安や迷いを感じさせながらも、それでも、頑張っていこうよ!と自分に発破をかける前を向いた歌詞になっていてこの映画の主題歌に選ばれたのも納得です。勿論、亀田誠治さんのアレンジも最高でした!

この曲、かかるタイミングが本当最高で。あるタイミングよりちょっと早いタイミングでイントロが入るんですが、それがいい。(後の画面の切り替えと歌い出しを合わせたかったのが一番なのかもしれないけど)2人が新たな人生のスタートを切り、爽やかな風が吹き抜けて行くようなとっっても感動的なシーンでした。メールの下りをそこに持ってくるのも映画版の非常に良いアレンジだったかと。「なるほど、ここに持ってきましたか!上手い!」と内心膝を打ってました!原作のラストに納得いかない人はまだ映画のラストは受け入れられる部分もあるんじゃない?笑
またここの2人の表情、特に小松菜奈さんの表情が良いんですよ。あんな絶妙な表情ありますか??あの場面、間違いなく彼女は橘あきらでした!あの表情を引き出せただけでもう成功でしょ、この映画。必見です!

他にも朝チュンか!?みたいなシーンからの〜?とか笑えるシーンもあったし、良い部分も沢山あったと思います。九条ちひろ演じる戸次重幸さんと大泉さんのシーンは現実の二人の関係性を観客側も知っているからこそ、すごくリアリティーを感じる良いシーンでした。

ただ、端々にちょっと演出の粗が見えたり、セリフの意味が通りづらいシーンがあった部分もありました。
図書館の場面はあくまであきらが自分で足を向けないと、後の自分を呼んでいる本があるっていうセリフとイマイチ呼応しないんじゃないかなー。他にも原作のシーンやセリフを上手く使えてない部分は幾つかあったように思います。ちはやふるシリーズはやっぱりそこら辺がすごく上手だったなーと相対的に感じました。あと、空手チョップは正直滑ってたと思います。あきらはあーいうのは着ないでしょ。

まぁ、そんな事は瑣末な事で、この映画、キャラクターを凄く記号的に描いてる部分も多くてそこはすっっっごくノイズでした。吉沢君とか、現代の若者っぽくしたいのか何なのか分かんないけど、本当に記号。彼が生きてるキャラクターに見えないし、魅力が皆無だなーと思いました。あと終盤、ファミレスの古株スタッフ?の久保さんがお昼ご飯食べてる時に近藤店長の机に置いてある原稿用紙に気づいて(生原稿を職場の机に出しっ放しって時点で有り得ないと思っちゃうけど)、それを読んで笑顔を見せるんですが、何とお弁当食べながら読んでるんですよ!!これ有り得ないでしょ。久保さんは劇中厳しい事を言う役回りだけど非常識な人でも無いし、根底には優しさを感じられる人だったのに、この描写の所為で久保さんが無神経な人に見えちゃいました。どういう神経でこんな演出しちゃうのか理解に苦しみます。こんな感じで脇のキャラクターの設定や演出が上手くいってないし不快も感じました。

・・・なんて文句も書いたけど、それは僕自身この映画を凄く楽しんだからこそ、細かい部分に目を向けてしまうのだと思います。というか、ここまで小松菜奈を魅力的に撮った時点で十分意義ある映画です!笑
とても爽やかで気持ちのいい映画ですし、とにかくフロントメモリーがかかるシーン周りが最高でした。そこだけで僕は高評価をつけちゃいます!恐らく今後何回も見返したりするでしょうし。原作がすでに名作なんで、一定の面白さは確実に担保してます。エンディングのシーンは僕の大好きな映画「何者」と同じ感動を感じました。

そしてこの映画を見るなら、時間帯は朝がオススメ!特に晴れの日の朝!劇場を出た後、思わず太陽の下を走り出したくなること間違いなし!勿論頭の中にはフロントメモリーが再生されていることでしょう!必見ですよー◎