とむ

恋は雨上がりのようにのとむのネタバレレビュー・内容・結末

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

世界一爽やかな失恋。
店長にとっての青春の続きが、あの瞬間から。これから始まって行くんだろう。


この映画のキモは、
もちろん年の差恋愛って言うところがコンセプトにはあるんだけど。
でも実際裏にあるテーマにやられちゃう人が多いんじゃないかな。

ズバリ、ある種の「青春映画」感。
青春映画と恋愛映画って、似ているようで微妙に異なるんですよね。
「夢を目指す」っていうのは、ある種青春真っ只中だと周囲に認知されている学生ならではの特権な訳です。

店長は、劇中でも言ってたけど「小説に片思い(この一文も、青春映画と恋愛映画を両立させる表現として上手い!)」している状態を、学生時代からずーっと引きずってる。
そりゃ、あきらの失恋よりある意味もっと辛い状態を、もっと長い期間生きてるんですよね。

だからこそ、ラストシーンの笑顔はあそこまでまで優しいんだと思うんですよね。
「その気持ちには覚えがあるよ。
辛いかもしれないけど、君なら乗り越えられるよ」
っていう。
めちゃくちゃ切ないですよね。


「大学に行ったら彼氏作って、店長のことなんて忘れちゃうよ」っていうのが一般論かもしれないけど、そんなことないと思う。
初恋って、一生引きずるものだから。
多分彼女は、ずーっと店長のことを好きでい続けるんだと思う。


というわけで、ストーリーに関してはいうこと特にないです。
ただ、演出面に関しては苦言の多い映画である事は間違いないはず。

原作がSNSや掲示板であれだけバズった作品だからしょうがないのかもしれないけど、
アキラが店長を好きだと決定的にわかるシーンが「教科書に書いた相合傘」っていうのは見せ方としてちょっと弱いかなぁ。
原作の「(店長…好き)」のコマの「えーーー!!」っていう衝撃からはあからさまに劣るよね。

映画的に映像だけでじんわりわからせる、っていうのも表現としては全然悪くないんだけど(むしろアリ)、
それにしたって相合傘の落書きは押しとして弱いでしょう。


あと、結構評判の良いみたいなオープニング映像。
あれ自体が悪いとは言わないし、ああいう音楽ガンガンに流しながらキャストの名前が出て、タイトルもバーン!!みたいな展開、映画館に来てる感じがしてむしろすごき好きです。
ただ、校庭ズザー!!からの転んで一回転!とかは、アキラのキャラ付けがいまいちぶれちゃった感じがするんですよねー。
そんなアグレッシブな子だったっけ?


そして、個人的にひとつあるのは、
「大泉洋が大泉洋でしかない」ってとこ。
原田眞人の「駆け込み女と駆け出し男」が大泉洋史上ベストアクトだと思っているんですけど、
今作に関しては大泉洋、ひいてはチームナックスでしかなかったですよね。

二人で居酒屋で話してるシーンとか、もうチームナックスでしかなかったですもの。
「普段の店長が見せない表情、反応」っていうのを表現したかったんだろうけど、
個人的には水曜どうでしょう見てる感じでした。


CM監督に映画の演出求めたって酷でしょ…とは全く思わないです。
だって、吉田大八も大林宣彦も、ウェス・アンダーソンもデヴィッド・フィンチャーも元々はCMディレクターなんですから。

「ジャッジ!」の頃からそうですが、
即物的な笑いや感情だけで映像を作るだけで無く、
もう一歩先の「映画的表現」まで次の映画では手を伸ばしてみてほしいです。
今作だって、映画として決して嫌いな作品ではなかったので。
(むしろもう一回見てもいいかなくらいのレベル)


あと、全然余談なので読み飛ばしてもらっていいのですが、
今作における店長とちひろと同じような感情が僕にもあり、
エンドロールの、それなりに目立つ位置に白く煌めく知り合いの名前を見て、僕はキーボードを叩くことを決めた。

ndjc、応募してみようかな。
とむ

とむ