じゅぺ

恋は雨上がりのようにのじゅぺのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
4.2
恋は雨上がりのように、大傑作。部活を離れた女子高生と、さえない中年店長。挫折を経験したふたりのしばしの"雨宿り"。少女は目の前しか見えないからこそ苦しみ、店長はたくさん経験を積んだからこそ、限界を知り、諦める。ふたりが互いを高め合い、一歩外へ踏み出した時の空が高く、爽やかで美しい。

小松菜奈、"冷たそう"っていうパブリックイメージそのままに。見た目は大人っぽく、しかし、中身はまだまだ高校生。なにをしてもどこかぎこちないけど、だからこそまっすぐで純な気持ちが伝わる。大泉洋のくたびれ感もよい。松本穂香は脇役ながら存在感抜群で、今後のブレイクに期待がもてる。

"君はいつも雨のときに現れるんだね"。やはり、あきらがバイトで働き、店長が仕切っているファミレス"ガーデン"は、雨宿りの場所だと思う。挫折の経験という人生の悪天候に、突如現れたあたたかく迎えてくれる場所。あきらは雨宿りの場所はここしかないと思ったのかもしれない。でも、そうじゃない。

本当は雨でびしょ濡れのあきらを迎えてくれる場所は、たくさんあるんです。それはいつもリビングで仕事をしているお母さんが待つ自宅かもしれないし、幼なじみが練習に打ち込む部活かもしれないし、本人も知らない、もっと遠くにあるのかもしれない。あきらがこれに気づけたことこそ、財産なのだ。

店長もそんな彼女のアピールを受けて困惑し、正しい方へ導こうと悩んでいるうちに、自分の人生についても考えはじめる。置いてきた青春にふたたび向き合う。雨が止み、晴れた空がとっても広い。タイトルの通り、この映画は空がキーになるけど、あきらを照らす朝日は特に美しかった。前向きなれる傑作。
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