MasaichiYaguchi

ゲティ家の身代金のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
3.6
実際に起こった誘拐事件を基にリドリー・スコット監督が映画化した本作では、我々の理解が及ばない老醜な守銭奴が登場する。
この人物、世の中の富を全て集めたかのような大富豪ジャン・ポール・ゲティは全てが功利主義に則っていて、それに外れることは無駄としか考えない。
そんな彼に、降って湧いたように莫大な身代金を要求する孫の誘拐事件が発生する。
ところが拝金主義の老獪は素直に応じようとはしない。
この事によって四面楚歌に陥ったのが息子を誘拐された母親アビゲイル。
彼女は離婚によってゲティ家から離れて普通の生活を送っていたので、莫大な身代金を捻出するのは到底無理で、血も涙も無い守銭奴の元義父にすがるしかない。
つまり彼女は息子を救う為、誘拐犯だけでなくこの冷血な元義父とも「交渉」し続けなければならない。
ある意味、主人公と言っていいジャン・ポール・ゲティを、急な代役とは思えない重厚さでクリストファー・プラマーが演じていて圧倒される。
センセーショナルを巻き起こした事件は二転三転して思わぬ展開を見せていく。
元CIAの交渉人フレッチャーの助力を得ながらアビゲイルは、幾つものハードルを乗り越えて息子を救うことが出来るのか?
この作品を観ると、改めてお金には「生き金」と「死に金」があると感じる。
ゲティは桁外れのリッチかもしれないが、彼は「死に金」ばかりを持っていて、自分や周りを幸せにする「生き金」は無いように思える。
幾ら稼いで大金を持っていても、所詮あの世にはお金は持っていけない。