アキラナウェイ

ゲティ家の身代金のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
3.2
世界一の大富豪は世界一のどケチだった!

1973年7月、ゲティオイル社社長"石油王"J.P.ゲティ(クリストファー・プラマー)の孫、ポール(チャーリー・プラマー)が誘拐される。犯人より要求された身代金は1,700万ドル。ゲティが身代金の支払いを断固拒否した事で、状況は絶望的に。孤軍奮闘するポールの母ゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)と誘拐犯との攻防を描く。

ケヴィン・スペイシーのセクハラ問題による降板、追加撮影の際のギャラ問題等、何かとスキャンダラスな話題で注目を浴びた作品。

クリストファー・プラマー演じるゲティの憎たらしい事!ゲティめ〜〜〜!
それでも老けメイクのケヴィン・スペイシーを見せられるよりよっぽど良かった。

孫への身代金など「無駄遣いする金はない!」と一蹴し、我が子の様に絵画を愛し胸に抱く、屈折したゲティを公開1ヶ月前の9日間のスケジュールで、よくぞここまで演じ切ったと感服する。

この作品の本質は孤立無援となった母の戦いである。

誘拐犯との戦いと億万長者ゲティとの戦いという二重構造の狭間で強く立つ女性をミシェル・ウィリアムズが好演。

問題は脚本。

ハラハラドキドキするものの、観客が感じ取っているそれは状況が動くことによるスリルではなく、あまりに状況が動かない事に対する焦りである。

金を払わぬ大富豪の祖父
狂言誘拐を疑い動かぬ警察
詰めの甘い犯人グループ
元CIAの肩書きを持つ交渉人チェイス(マーク・ウォルバーグ)もいまいち精彩を欠く。

何だかゆるゆるだ。

最後に最も納得いかない事を下記にぶちまけます。
ネタバレ含みますのでご注意を。















ゲティの死後、その遺産をゲイルが受け取っちゃダメよ。ゲイルの最後の表情。それはゲティへの憎しみそのもの。愛する孫の身代金を出し渋ったゲティへの憎しみは想像を絶するものであっただろう。夫との離婚に際しても、子供の監護権だけを求め、金の受け取りを拒否したゲイル。そんな貴女がゲティの富を受け継いじゃダメ。

この描写がこの映画を完全にブレさせた。

せっかく実話を基に脚色を加えていると銘打つならば、ラストは遺産を受け取らずに颯爽と去るゲイルの後ろ姿で締めて欲しかった!