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ゲティ家の身代金のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
3.8
迂闊なことに、最初「ケネディ家の身代金」と読んでしまった。はて、そんな誘拐事件はあったかなと頭をひねっていたが、よく見れば「ゲティ家の身代金」。そうか、あの石油王ポール・ゲティのことかと膝を叩いた。写真エージェントとして「ゲティ・イメージズ」にはお世話になっているが、この「ゲティ」は、この世界一の大富豪の子息が始めた会社。この作品で誘拐されるのは、その兄にあたる人物の子供。大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫にあたるが、当時、すでにゲティ二世と妻は離婚しており、やや距離があった。そのこともあったせいか、当初、世界一の富豪は孫の誘拐に身代金を出すことを拒否した。

そこからドラマは生まれていくのだが、誘拐された孫の母は、頑なに身代金の支払いを拒否するポール・ゲティとの闘いが始まる。それにゲティの片腕でもある元CIAのエージェントが絡んで、ドラマは進行していく。誘拐犯の動向ももちろん描かれるのだが、物語の中心はこの世界一の大富豪と母の確執に焦点を当てているようだ。巨匠リドリー・スコット監督がメガホンを取っているせいか、やや全編長い感じもする。誘拐事件は二転三転していくのだが、もう少しコンパクトに展開していれば、より緊迫感も増していたかもしれない。

公開直前に、ゲティ役のケビン・スペイシーに、セクハラ・スキャンダルが巻き起こったため、たった10日間で、彼の出演場面を撮り直したという逸話もある。個人的には、ケビン・スペイシーのゲティ役も観てみたかった気はするが、急遽、代役で登場したクリストファー・プラマーは、この役で主要な映画賞の候補にもなったりした。場外でも、いろいろ話題の豊富な作品だったが、本編も公開1か月前に10日間で撮り直したというのが、信じられないくらい、悪くない出来だ。
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