おーたむ

ゲティ家の身代金のおーたむのレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
3.5
面白そうなタイトルに惹かれて見てみましたが、思ってたのとは違いました。

私はもう少しサスペンススリラーとして楽しめる、娯楽性の高い作品を期待していたので、多少肩透かし。
ただ、話の主軸であるジャン・ポール・ゲティの怪物っぷりはなかなか面白く、ふつうの身代金誘拐では題材になり得ない、人質の母親と祖父の間の対立構造も、新鮮に見させてもらいました。

が、せっかく得たユニークな設定が、いまいち生きてない感も、少々。
誘拐犯側の動きにも時間を割いているせいで、面白そうだった家族内対立の話はいまいち食い足りなくなってるし、部下にキレられて説得されちゃうあたりは、ゲティの怪物性を薄めてるし…と、振り切った脚色をためらった結果、作品が中途半端なところにおさまってるように見えてしまい…。
実話ベースでも、創作の部分って重要なんだろうなと思ったりしました。

一方で、役者陣は素晴らしかったです。
主演のミシェル・ウィリアムズは、自身では動かしようのない状況下で、それでも強くしたたかに立ち回る母親を好演していましたし、クリストファー・プラマーも、底の見えない闇と、見えないと思われた闇の底を見せる怪演が圧倒的。
物語のイマイチ感を役者の演技がカバーしていて、作品をかろうじて見ごたえのあるものに引き上げていたと思います。

まあ、とはいえ、作品の内容より、もろもろの騒動の方が有名になっちゃうのが頷けるような作品だったな、とも。
個人的なイメージとしては、傑作になり損ねた作品って感じでした。
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