マヒロ

ゲティ家の身代金のマヒロのレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
3.5
大富豪ジョン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)の孫・ポールが誘拐され、1700万ドルの大金を身代金を要求される。孫の母であり、ゲティ氏の息子の別れた妻であるゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)はお金を払うよう嘆願するも、稀代の大金持ちであると同時にドケチでもあるゲティは痛くもかゆくもないはずの身代金の支払いを拒むのであった…というお話。

ゲティを演じる予定だったケビン・スペイシーのゴタゴタのおかげでケチがついたかと思いきや、リドスコ監督の脅威の早撮りと代役のクリストファー・プラマーの好演で逆に箔がついた感じのある作品。問題を二人のベテランの力技でねじ伏せてしまった感じが格好いい。

基本真っ当なサスペンスだけど、所々に見られるイジワルな演出がなかなかニクくて、中でも大体の映画ではカットされるであろう、ある"痛い"場面を、最初から最後までガッツリカメラを振らずに撮り続けるシーンは、それなりに慣れている自分でも流石に目を背けたくなった。近年の痛グロ度増し気味のエイリアンシリーズといい、リドスコ監督はこういうシーンに妙にこだわる気がする。

ある意味誘拐犯より強大な敵として立ちはだかるゲティは、実在したということも含めて強烈なインパクトを残す。金があってもここまでケチになれるのか…というかここまでケチだからこそ金持ちになれたのか。身代金を払う場面で節税の話になるとは思わず、もはや笑ってしまった。

調べても出てこなかったので多分創作された人物なんだろうけど、誘拐グループの一人ながら、なかなか身代金を払わない親族と、他の犯人達の非道な行いにより追い詰められていくポールに感情移入してしまう男・チンクアンタが結構いいキャラしていた。とにかくこちらの期待をすかすようなイジワル演出が多く疲弊させられるので、チンクアンタとポールのなんとも言えない関係性は、この映画の一種の清涼剤みたいでホッとできるシーンだった。


(2019.24)
マヒロ

マヒロ