ベルサイユ製麺

カンフー・トラベラー 南拳のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.3
2147年。エイリアンの侵略により人類の大多数が虐殺され、資源は掠奪された。国の線引きを捨て人類一丸となって抗戦するが旗色は悪く、中国の基地が残された最後の砦だ。前線ではロボット兵士がエイリアンと戦っている。そのロボットのメンテナンスを行う、言わばロボットの衛生兵が、シュ・ズーイン(🚺)ロボット修理センター技術員と、チェン・フー(🚹)同センター主任技術員だ。
エイリアン達の戦術にロボット兵士は無力化され全く歯が立たない。が、唯一チェン・フー主任の繰り出すカンフー・南拳だけがエイリアンに太刀打ち出来るのだ!軍はロボット兵士にチェンフーの南拳をインストールするプランを立てるが、チェンフー曰く「私の南拳は衰えていてもはや奥義も使えない…」。
そこで改定プラン!①チェン・フーそっくりのロボットを作る②タイムマシン(!)で南拳の達人に会いに行って教えを請う…
この完璧としか言いようの無いプランに発生した唯一のイレギュラーは、シュ・ズーインが土壇場でタイムトラベルに同伴した事!それ以外は完璧!!

完璧!!!です、この映画!一本きりの背挿のジャケットをTSUTAYAで見つけた時「やったあ」と思ったけど、見終わっても「やったなぁ」って感じでしたね。ごきげん。
冒頭の5、6分、宇宙人(鎧を着たゴブリンみたいの)とロボットが無機質なコンビナートみたいな所でワシャワシャ揉み合っております。全てがCG。しかも“プレステ2が全力を尽くしました!”みたいなクオリティ…。中華系大作のCGは、仕上げの雑さもさることながら全く重さを感じさせない挙動なのがいつも最高です! で、そこに合成で割って入るのが主人公のチェン・フー。きっと真緑の部屋でバタバタしていたのだと思う。御苦労であった。聞けば『マトリックス』シリーズでアクションのコレオグラファーをされた方のようで、裏方なのにはそれ相応の理由があるのだと再認識。“いつまでもフラフラしてるイトコ”みたいなルックス。最高。
チェン・フーそっくりのロボット、ジウ(可愛い名前がつきました)も当然本人で、コロッケや吹越満と同じ演技メソッドを見せますね。
ストーリー上どうしても気になってしまうのがタイムマシンの存在で、そんなの有ればどうにでもなりそうだけど、一応タイムパラドックスを気にしているようでした。…いやいや。
更に、ロボットに対して注意事項としてロボット三原則の遵守を命じます。いや、そんなの言わなくても守るでしょ⁈因みに破ると自爆だそうです。迷惑極まりない…。肝心の、“南拳の奥義を如何にして未来に伝えるか”ですが、データをメディアに入れて、後からでも分かる所に埋めておく、のだそうです。漂流教室か!250年以上も平気なのか⁈
タイムトラベルでたどり着いた1885年の清朝。フランス軍と交戦中で、目の前に清の兵士の骸がゴロリ。おもむろに服を剥ぎ取りパクります。良いのか?…まあ、ロボット三原則にはそんなこと書いてないでしょうけど…。
物語は以降、エンドシーンまで過去パートです。普通の中国の時代物。未来パートに比べると流石に手慣れたもので、珍奇な見所はグッと少なくなりますね。残念…。
ジウは南拳の達人(麿赤兒激似)に弟子入りを申し出ますが、なかなか許可が下りません。やはりいつまでもフラフラしてそうなルックスのせいか?この辺りのドラマも至って普通。残念…。
中盤、ジウを狙う黒衣の刺客が登場。サラサラのボブに丸グラサンの祐真智樹似の優男です。ジウvs.刺客の格闘シーンはもう普通に良い出来。爪先で踏ん張って持ちこたえたり、フワッーっと浮かびながら三段蹴りしたりとか、『孫文の義士団』とかに近いノリです。
ジウは師匠の麿赤兒に自らの正体を明かし、弟子入りを志願した理由を話します。それを受けての赤兒の返答→「細かいことは良く分からんが…」 。…でしょうね!!
ジウはロボットだからマシンだから感情を持ってなくて、その為に奥義を習得出来ないのですが、人々の想いに触れ徐々に人間の心を理解していきます。…未来から来たロボットが、人間との触れ合いの中、感情を持つ。一瞬脳裏に革ジャンを着たグラサンの大男がよぎりましたが誰でしょう?なんか、こう親指を…。
以降、物語は特段意外性も無いまま終劇に向かいますが、それでも十分に楽しめましたし、個人的には、かつてフランスと抗戦し、未来では宇宙人と抗戦している中国の方達の領土に対する観念がなかなか興味深かったですね。
全体的なフィーリングは『未来忍者』や『ゼイラム』とかにも近いかもしれません。その辺りの愛好家にもやんわりおススメ。

!なんと、続編『カンフートラベラー 北腿』も存在する模様!み、観たい。さてはアレだな?「I’ll be back👍」だな?やっちゃったなー?