工作 黒金星(ブラックヴィーナス)と呼ばれた男(2019)
韓国映画産業発展の名目の中で作られた映画祭
その名も釜日(プイル)映画賞
2018年度 "最優秀作品賞" に輝いた本作
作品賞だけでなく男優主演賞・男優助演賞・脚本賞・美術賞と様々な賞を獲得している
同じ年の作品であるイ・チャンドン監督の傑作映画『バーニング 劇場版 』も抑え込んで最優秀作品賞を受賞しているあたり
"工作" の作品レベルの高さが窺える
ちなみに翌2019年度の釜日映画賞には2020年に公開中の『パラサイト 半地下の家族 』が最優秀作品賞を含む6部門を獲得している
話を作品に戻すとして、、
基本はノンフィクションベースであり緻密な歴史・サスペンス・スパイ映画といえる
時は90年代(1992年)
北朝鮮が核開発を行なっていることへの実態調査のため韓国の国家安全企画部のチェ室長から軍人パク・ソギョンが「工作員(スパイ)」として「北に潜入せよ」と命じられる
そのコードネームこそ黒金星(ブラック・ヴィーナス)
パク氏は軍人の肩書を捨てあらゆる身分を書き換えた末に事業家に扮する
3年に渡る工作活動の末に北朝鮮の対外交渉の責任者であるリ所長に接触する
北の幹部からは常に 「(南:韓国の)工作員(スパイ)では?」
と疑いの目をかけられている
表向きはしっかり広告事業展開を広げ
裏の顔は諜報活動を着実に遂行していく
北の幹部からは信頼関係を築くために「南(韓国)の諜報活動を行うよう」に促される
そこを実に上手くかわしつつビジネスライクな姿を貫き北の幹部の確かな信頼を得ていく
いくつかのミッションの中で故・金日正(キム・ジョンイル)最高権力者にも接見して危険なミッションも次々と達成する
まだまだ書き足りないけど
あらすじはここまでにして、、、
この映画は政治や歴史に全く強くない私にも色々分かりやすくハッキリと聡明に教えてくれる
「朝鮮戦争の休戦中も互いにスパイを送り込み諜報活動は続いていること」
それがまず明確に分かる
「銃火器の闘争はあくまでもフェイクで戦争は情報戦争へと変わり毎日行われている」
という事実も分かる
時々北朝鮮から発射されるミサイルはあくまでも目線を別の話題に逸らすための手段
ミサイルを一回発射することは韓国の世論すら動かすことができることも教えてくれる
この映画の面白さは北朝鮮の実態が映画を通して垣間見ることもできる
相手の懐にしっかり入り込めればいいけど…少しでも不穏な動きや行動がバレれば一貫の終わりで「死」が待っている
劇中でもこの点の描き方がとてもヒリヒリしてて目が釘付けになってしまった
セリフの一つ一つも重くて登場人物達の言動と行動がその後に左右していくのが分かる
特に故・金日正(キム・ジョンイル)最高権力者(委員長)に会うシーンは物凄い緊張感と緊迫感があって言葉の重みが明らかに違う
金日正(キム・ジョンイル)最高権力者に会う直前の確認で
・(委員長と)目を合わせてはいけない
・(委員長の)言葉を遮ってはいけない
この2点だけでも凄い制約と重圧がある
役者の演技力が桁違いなレベルであって
丁寧な感情を描く裏に腹黒さも描いている
北と南は互いに牽制しつつ登場人物同士の思惑と駆け引きの中で観てる側もどんどん引き込まれていく
ストーリーの終盤には1997年に行われた韓国大統領選挙をめぐる韓国と北朝鮮の裏取引も描かれてくる
韓国側の思惑により工作活動をやめる必要性が出てくる
けれども全てが無になることを阻止すべくパク氏の苦悩と焦り そして 策略が描かれる
結果 工作がバレた後は生き残れるのか否かも分からない中で緊張感が更に増していく
北朝鮮内での粛正をも念頭に入れる中でパク氏・リ所長の堅い友情の部分も描かれていく
これまでの信頼関係の築き上げがあって互いの一挙一足の行動には命がかかっているからこそ美意識をも感じ取れる
色々まだ書き足りないけど、、
いずれにせよ2020年に観た映画の中で現状トップ5に入るくらいの凄い映画だった
心理的な駆け引きや人間模様が凄いレベルで描かれている作品でそういうテイストが好きな人はぜひ観た方が良い映画