20/6/15@大泉#5
<同志>
権力者の意のままに国家の反目は続く。それでも二人の愛国者が「命を懸けて国を愛する」という共通項でつながる。真の「同志」の友情。
(事実と聞くが)南の工作員と北の金庫番という設定が秀逸だ。二人は己の信念と国益、そして権力者の邪心の矛盾に終始苛まれ続けるのだが、本作はそういう葛藤の内面描写はミニマムに抑えて、物語と事実の力でグイグイと引っ張っていく。見応えのある骨太さ。
スパイ映画の見せ場<難解な取引>の見せ方もいい。こういうのはヘタに観客に分かりやすく作ると、現実味が薄れて逆に冷めてしまいがちなのだが、本作は「ギリギリ分かるかどうか」の微妙な匙加減で、巧妙な手口を見せてくれる。こうして作られる緊迫感に吸い込まれていった。
映画的真骨頂は、本気で作った北朝鮮中枢部の描写と、そこに辿り着くまでの緊迫感。これが凄かった。北の将軍さえも惜しまず登場させるサービス精神と、特殊メイクの執念。
北の独裁政治、南の「民主主義」。
両方の問題点を浮き彫りにして、結局どちらも為政者の論理で動くという怖さ。南北統一など遥か先と思わざるを得ない。「パラサイト」で影が薄くなってしまったが、韓国映画の底力を再認識した。