ベルサイユ製麺

修羅の華のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

修羅の華(2017年製作の映画)
3.3
いつもレンタルする際、有名映画なら一瞬、よく知らない作品でもせいぜい2、3秒しかジャケを見ない(ネタバレしないように、でもあります)ので、例えば全く知らないこの作品の場合も、ちょっとジャケを見て「この血塗れ金髪なんちゅうイケメンだ見よう」(←この間0.5秒未満)とレンタルを決めたのです。…このレベルのイケメンがまだいるのか韓国、恐ろしい。このイケメンにヤラレない人なんて、出木杉くんのスケッチをディスるのび太くらいのヒネクレ者だよ!…とか思いながらウキウキウォッチングしたところ、how do you do ⁈…イケメンじゃねえ!キム・ヘス姐さんじゃねぇか!

と、得したなぁ〜っと。
ストーリーはちょっと説明し難いというか、説明しても意味が無いというか、です。
ハニートラップ、暴力沙汰等何でも有りのめちゃブラックな大企業“ジェチョル”。会長キムは更なる事業拡大のため、グループをクリーンにしたいと考えています。→元は会長の情婦で現在は実質上No.2の秘書ヒョンジョン(キム・ヘス)も彼の意向に従いたい。←しかしジェチョルグループの闇の実行部隊長、腐れ紳士のサンフン室長は野望を秘めている。←そして、かつてジェチョルの十八番のハニ☆トラにかかった検事キムはサンフンを唆し、会長キムを消すように働きかける。🛩その頃、海外で暮らしていたキム会長の跡取りの息子が帰国して…と、書いても全くピンとこないと思います。
細かい権力構造・パワーバランスとかはさておき、話の発端はサンフンがクーデター的にのし上がりに動き出すところなのですが、サンフンは過去に色々あってヒョンジョンに尊敬と愛情の入り混じった複雑な感情を抱いております。ヒョンジョンは会長の為に尽くしたい、のだけど彼女には実はもっと大切なものがあって…。とか、こんなの観ないと分かりませんよね。
大雑把に言えば、愛憎入り乱れる権力争いの話だし、クライマックスは完全に活劇なのですが、実はこの作品のコアの部分は繊細な人間ドラマだったりします。とにかくみんな悲しい人達…。自分は割とぼんやり観始めてしまったので終盤まで人物の細かい心情の機微を捉え損ねていた感は否めません。勿体ない事をしたなぁ…。
全体的に夜のシーンや外からの光を遮った室内での展開が多くて、同じノワールでなんとなく想像したのは『シン・シティ』だったりしました(褒めてる気にならないのは何故だ)。話の運びの落ち着きぶりからは『黒衣の刺客』もちょっと思い出しましたし、後半のキム・ヘスの八面六臂・死に物狂いの大活躍には『悪女』…では無くて、何故か『オルカ』だ!と思ったのです。
韓国映画のクレージーアクションを見過ぎたせいで、今作のクライマックスちょっと地味に感じてしまいそうですが、実際は十分凄いですし、極妻系の外連味にビリビリに痺れます。
なんといってもキム・ヘスが全編カッコいい!アシンメトリーな側面刈り上げのツーブロックに、眩しいような金色の髪。めちゃくちゃにモードでアヴァンな衣装(どこかに特定班いないかしら?)を着倒す様は神々しい程です。日本の女優でコレやってファニーになっちゃわない人が何人いるかしら…。

尺もコンパクトだし、濃密で陰鬱な愛憎劇は日本人の感性にも合うと思います。エンディング付近はニューシネマ感(とは?)も漂ったりして、いつもとちょっと違う雰囲気の韓国ノワールお探しの方にはおススメです。…大人っぽいと書きましたが、ハンディ丸ノコ振り回して戦ったりもするのですけどね☺︎