TAK44マグナム

スカイスクレイパーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

スカイスクレイパー(2018年製作の映画)
4.0
イーサン・ハントに、俺はなる!!


高さが1000メートル以上もあるビルから、ドウェイン・ジョンソンが落ちそうになるけれど当然落ちないアクション大作。
ゴルゴ13でさえ、長い長い連載中で今のところ最大のピンチがエボラ熱に感染した時とツェツェ蠅に刺された時、そしてドーソンビルから落ちそうになった時なので、つまりはいくら超人的な存在と言えども超高層ビルから落ちれば死ぬのが自然の摂理な訳です。
落ちて死ななくても違和感がないのは、普段から崖から飛び降りて鍛えている範馬勇次郎か、もしくは宇宙から生身で生還した江田島平八塾長ぐらいなもの。
さすがのドウェイン・ジョンソンの筋肉でもグチャッと潰れてしまうのは必至ですから、ちゃんと緊張感が得られるというわけですね。
これがナカトミビルぐらいの高さだったら、もしかしたら足を折るぐらいで済んでしまうかもしれない(←そんなわけも無い)
しかも最初から義足という設定なので、「なんだ、ドウェイン・ジョンソンが落ちたってどうせ超合金製の義足が壊れるぐらいだろう?つまらん!」と思われてしまうかもしれません。
アラン・リックマンが迫真の表情で落ちていったのとはわけが違うのです。
まぁ、あれは落ちるタイミングじゃないところで落とされたので本当にビックリしているからなんですけれどね。
で、なにが言いたいのかというと、だからこそバカみたいな高さがあるビルっていう設定にしたのではないか?ということを言いたいのです。
1000メートルもあれば、いかにドウェイン・ジョンソンといえど、いくらなんでもペシャンコでしょうからねぇ。
決して、「チャイナが何でも世界一ィィィィィーーーッ!!」じゃないと気が済まないからではないのだと、中国の方々に変わって、ここで強く主張しておきたいのです!
あくまでも観客を納得させるための無茶な設定なのだと。

・・・なんてことは無いか(苦笑)
たぶん、映画の中でも良いからデッカいビルをおっ建てたかったのでしょう。
そのうちリアルに建てそうですしね。
一番上にあるフジテレビの展望室みたいなデカい球体が落ちて、香港の他のビルをボーリングのピンみたいになぎ倒してゆくのをドウェイン・ジョンソンが「ブラック・エンジェルズ」の松田さんみたいに身一つで止めるんじゃないかと想像していたんですが、そんなシーンはやっぱりありませんでした。
そのぐらい荒唐無稽なバカをやってくれた方が後世に残る作品になれたかと思うのですがね。
おバカ大作として!


前置きが長くなってしまいましたが、ドウェイン・ジョンソンがネーヴ・キャンベルと(子供達にキモいと言われるぐらい)イチャイチャする本作、最近流行りの米中がタッグを組んだアクション大作で、ドウェイン・ジョンソン版「ダイ・ハード」+「タワーリング・インフェルノ」ともいうべきもの。
新鮮味は全くないけれど、アトラクションとして観れば、満点ではないにしろ及第点超えは確実でしょう。
予告編でもプッシュしていた「パパ、飛びまーす」も、どうみても無謀ですが単純に面白いから仕方がない。
しかし、微妙に「ダイ・ハード」とはスタイルが違うような気がしますね。
似て非なると申しますか、よりアトラクション色が強く、対テロリスト戦よりもドウェイン・ジョンソンのSASUKE挑戦を観ているような感覚でしたよ。

最初から最後まで無茶なお話なので、香港警察がモニター眺めているだけで無能だったり、重要なモノがそんなところにわざわざメンテナンスハッチ作る?みたいな場所にあったり、いくらなんでも消化設備が壊れなさすぎだったり、「鏡の間」みたいな球体内部でのバトルが何が何だかだったり、ビルのオーナーが意外と武闘派だったり、そもそもビルがどういう構造になってるのかさっぱり分からなかったり・・・と、説明不足からくる疑問点がかなり多く、細かい粗を挙げたらキリがありません。
他にも、例えば子供の喘息設定いる?って思いました。
先に助かってしまうので、ほぼ機能しませんが、どうせなら最後までスリルを持続させ、もりあげるために敵に捕まるのは喘息持ちの弟の方にするべきじゃないですかね?

・・・というようにチグハグなのが目立ちますけれど、それを広い心で許してあげるのが、この手の映画の正しい鑑賞法、もうそれはマナーといっても良いのかもしれません(苦笑)
昔の香港映画なんてこの100倍はワケがわからずに無茶苦茶でしたし、「そんなアホな!」とツッコミたいがために観る映画があったって良いじゃないですか?
全部が全部ダメダメなら仕方ないですが、ドウェイン・ジョンソンという説得力この上ない俳優さんが出張ることで単なるポンコツ映画ではないメジャークラスな「おバカさん」を楽しめる。
最高じゃないですかね?
いまひとつ魅せ方に不満がないわけでもありませんでしたが、概ねゲラゲラと笑いながら鑑賞できたのでマグナム的には満足です。


特に良かった点は3つありまして、ひとつめは敵のアホな作戦にとりあえず理由があることです。
何故、ビルに放火するのか?
なるほど、理屈は分かります。
ただ、テレビ中継されちゃっている時点で、あの脱出方法はうまくないんじゃないかと思いました。

ふたつめは、主人公の義足設定です。
ドウェイン・ジョンソンと言えば、そのパブリックイメージはまさしく超人。
素のまんまアベンジャーズにスカウトされてもおかしくない逸材であり、相手がジェイソン・ステイサムだろうが巨大怪獣だろうが怯まず戦うようか漢です。
そんな漢なら離れたビルに飛び移ったりしても「普通じゃね?」で済まされてしまう可能性が高い。
そこでハンデをつける。
超人を限りなく「家族思いの常人」に近づける。
まぁ、義足が高性能なこともあって全く常人化できてはいないんですけれども、他の作品よりかは戦闘力低めのドウェイン・ジョンソンに感じられはしたので、これも一応は成功しているのではないでしょうか。

そしてみっつめ、これが最高だったんですけれど・・・
そう、本作を語るうえで決して外すことのできない要素、それが粘着テープであります!
「スカイスクレイパー」=「粘着テープ映画」といっても過言ではありません!
粘着テープの会社がスポンサーなんでしょうか?
セリフでも粘着テープへのリスペクトを欠かさない映画なんて、他には「ターボキッド」ぐらいしか思いつきません!
そんな最強アイテムである粘着テープは様々な活躍をしますが、特に主人公がビル壁面を移動する場面でポテンシャルを遥かに超える超活躍!
「そんなわけあるか!」の真骨頂が味わえますよ!
最新ガジェットに頼るようなイーサン・ハントなんて目じゃないぜ!と言わんばかりです!
こんな自殺行為をやろうと思った時点で、ウィル・ソーヤーはイーサン・ハントを超えたっ!!
真面目な話、この場面は本当に
香港映画ぽいというか、「あのハリウッド映画であんなことやってたから、こっちはもっと無茶苦茶なことをやったろうぜ精神」が垣間見えるようで、少し嬉しくなりましたよ。
思えば、飛び移る場面もロープも何も補助無しで飛ぶわけで、ウリとなるアクションシークエンスには、「とにかくハリウッドを超えようぜ」という強いマインドが働いているように感じられました。
気のせいかもしれませんけれど。


先生がドウェイン・ジョンソンで生徒にヴァン・ダムやセガールしかいない荒廃した学校の様に偏差値が低い映画ですが、家族思いのオジさんがひたすら無茶するスタイルは普遍的に楽しいし、スカッとしたい時にはオススメ。
なにより、粘着テープを最大限に活用する、これぞまさしくD.I.Yハード映画ってわけでして、テープで背中に銃くっつけた「ダイ・ハード」が好きなら、やっぱり観ておくに限ると思います!

でも、どうせなら季節をクリスマスにして欲しかったかな。



劇場(109シネマズ湘南・IMAX2D)にて