MasaichiYaguchi

プーと大人になった僕のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

プーと大人になった僕(2018年製作の映画)
4.0
映画の冒頭から胸に込み上げるものがあり、ストーリーが進むつれてノスタルジーと共に益々心が揺さぶられた。
A・A・ミルンの児童小説をもとにディズニーがアニメーションシリーズ化したものを、自ら〝後日談〟として実写映画化した本作は、今では大人になったクリストファー・ロビンのような当時のアニメファンの心の深いところまで届くような物語を紡いでいく。
描かれた国や時代は違っても、現代を日々忙しく過ごす大人向けに制作された本作は、「本当に大切なこと」や「本当の幸せ」とは何かということを、クリストファー・ロビンとプーたちとの数十年振りの再会や、その後の〝冒険〟を通して描き出していく。
それにしても本作に出てくる言葉の数々、「何もしないは、最高の何かにつながる」、「今日が一番好き」、「どこかに行きたいと決まっていると、どこかが来てくれる」、「お仕事は風船より大切?」、「でも、君は君でしょ?」等、これらは「おばかさん」と言われるプーが発しているのだが、何でこんなに心に響いてくるのだろう。
社会で言う〝良い大人〟になろうとして子供時代の〝宝物〟を忘れ、片隅に追い遣ったクリストファー・ロビンが仕事に行き詰まり、そのことで家庭もギクシャクし始めた彼が、その〝宝物〟と再会することによって自分自身や人生を見詰め直していく様子がファンタジックに、ハートフルに描かれる本作は、度重なる天災や社会の変化に疲弊した我々の心に癒しと温もりを与えてくれます。