凛太郎は元柚彦

ホテル・エルロワイヤルの凛太郎は元柚彦のレビュー・感想・評価

ホテル・エルロワイヤル(2018年製作の映画)
4.0
凄い映画だったので、解説します。

ホテルエルロワイヤルに集まってきたのは、何やら隠したい過去を持つ七人の宿泊客。
いったい誰が嘘をついていて、七人の客は何者なのか?
謎が謎を呼ぶストーリー展開である。
さすがドリュー・ゴダード監督、軽快なテンポで二転三転する嘘が絡まっては解けていく駆け引きは、見てて飽きさせないし素晴らしい。
しかし実はこの映画、ただの群像劇ではないのだ。
後半、クリヘムが上裸になってノリノリで演じてるビリーとカルト殺戮集団が「シャロンテート事件」のチャールズマンソンとマンソンファミリーを示唆していることには何となく気付いた人も多いだろう。
そこに気付いてから、この映画に仕組まれた〝本当のテーマ〟がわかってすごい面白くなった。
まず本作に登場するホテルエルロワイヤルは、ケネディ大統領が愛用していたCal Neva Lodge & Casinoがモデルになっている。かつてのそこのオーナーはケネディと密接に関わっていて女性を紹介し不倫問題の発端となった人物といわれている実在のジャズ歌手フランク・シナトラだ。
さて、どういうことかお分かりだろうか?
そう、この映画に登場する七人の客は、それぞれ60年代アメリカの黒歴史と希望の象徴となっているのだ。つまり擬人化ってやつ。
アメリカという国を擬人化した七人が史実になぞらえて交錯し、アレがああなってやがて迎えるあの結末。
ラストシーンで火に放り込んだ宿泊客の名簿はなにを示唆しているのか。ここの意味がわかるとめちゃくちゃ面白い。音楽を愛する人にとってはたまらないメッセージが込められている。
60年代のアメリカの姿をそのまんま「ホテルエルロワイヤル」に置き換えて描き出した秀作だ。
ただ一つ言うなれば、前知識ありきの映画だし、「アメリカの歴史なんざ興味ねーよ!俺はおもしれードタバタ群像劇観にきてんだよ!」って観客が大半だと思うので、基本的にオススメはできない。
もし「60年代アメリカの様子を勉強したいから分かりやすい物語にしてくれたらな〜」なんて物好きがいたら、真っ先に本作をオススメしたい。