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暁に祈れのkassyのレビュー・感想・評価

暁に祈れ(2017年製作の映画)
3.6
試写会にて。

タイでボクサーをしていたイギリス人のビリーは、薬物に溺れて逮捕される。そして収容された刑務所は、暴力、レイプ、薬物、汚職にまみれた最悪の場所だった…

原作はベストセラーの実話である。
意図的にタイ語の字幕がオフにされ、言葉もわからない国で収監されるとこういう事になるのだという恐怖体験を観客も疑似体験できるような映画になっている。
ほとんどセリフが訳されず、何が起こってるのか言葉では全くわからないまま、地獄のような服役生活を送る。
見ながら地獄だ、これは耐えられない。と何度も思った。
この映画に出演した実際の刑務者の話によると、8〜9割本当の話らしい…

ただ、そんな刑務所生活の中で、ビリーは薬物に溺れながらもムエタイジムに通って身体を鍛える事により、自らを再生させていく。そこには格闘技に打ち込む純粋な気持ちがあった。
ムエタイシーンを見て、あぁこれは刑務所の恐ろしさを超えたとても純粋な格闘技映画なのだと気付かされた。
何かに打ち勝つために、目指す場所。
弱くて惨めな自分を打破するための力。
生きるために戦う。
見えづらいほどアップで撮られたムエタイシーンは、計算されすぎてないのが逆に良かった。

沢山言葉は溢れて飛び交っているが、心情は一切語られず、映像だけで見せていく潔い映画だ。
ほとばしる静かで熱い感情と、むせかえるようなエネルギーが画面に満ち満ちている力強い映画だった。


丸山ゴンザレスさんの現地体験レポート、大変興味深く面白かったです。
以下メモ
*ビリーが身体に彫ったのは虎。
タイでは刺青は仏教的に護身の意味を持ち、自分をもっと高める。何かに打ち勝つという意味が込められている。タイでは近年廃れていたが、アンジェリーナ・ジョリーが彫って人気が再燃した。

*映画の刑務所は実際に1年前まで使われていたタイの刑務所で、掲示物などは本物。

*刑務所の人たちはリアル刑務者たちで、役作りもなくエピソードなどは本物らしい。

*タイではムエタイが強いと待遇がめちゃくちゃ良くなり、終身刑でも刑期が短くなるらしい…
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