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暁に祈れのpepoのレビュー・感想・評価

暁に祈れ(2017年製作の映画)
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作中、広く拓けた景色や俯瞰の画面はとても少ない。だからビリーが試合のために「移送」されるバスのシーンや、とある場所からフラリと市街に出たシーンは、観ていて咄嗟に目が慣れないような感覚を覚えて眩しかった。
そして改めて、言葉も通じない中、連綿と続く暴力や不正や不衛生、終わりの見えない閉塞感にこちらも身を固くしていた事を自覚する。

スポーツで成り上がってブレイクスルー、という話ではなかったと思う。チームに入って少しマシな房には入れたけど、強くなれば生きのびられるという環境でもなかったし(“感染した血液”入りの注射針に拳は有効か?)。
フラリと出た市街から戻ったのは他にどうしようもなかったからだろう。振り返れば収監前の自室の荒み方だって酷かった。
ラストはひと筋の希望に思えたけれど、実話なだけに、彼の幼少期や映画制作のその後を知るにつけその光の糸の儚さに為すすべのない思いが募る。あの場所を核にして、ビリーを捕らえていたのは彼の人生そのものだったのかもしれない。
(現在ご病気との事、回復をお祈りします...)

映画館を出た後、昼下がりの街の秩序がかけがえのないものに思えた。