暮色涼風

暁に祈れの暮色涼風のネタバレレビュー・内容・結末

暁に祈れ(2017年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

分からない言葉の中に放り込まれる怖さ。

HIV感染者自らの血を入れた注射器による、この上ない脅し。

周囲の怒号や声援よりも、はるかに大きく聞こえてくる、主人公の小さく小さく漏れる息づかい。

不当な暴力を嫌悪し、ボクシングやムエタイを好む、隠れた道徳的観念。また、それを破ってしまった時の謝り方。

最高だった。

色んな映画を観ていて、ふと、よく思うことがある。
今謝まるべき、又は、お礼を言うべきタイミングだっただろう、と。
でも、映画の中の人物は、言うべき時に謝ったりお礼を言ったりしないことが多い。
民族性の違いか、映画の中だから省かれているのか、普通なら言うべきという時になかなか言わない。
でも、この映画では、謝罪の場面をかなり強調して描いている。
それは、主人公の変化を表す上で重要な場面だったからだ。
祈り。礼。そういったものの大切さがスポーツマンシップに繋がり、地獄とも言える劣悪な環境の中で自己と向き合い、薬を断つことができ、身も心も、タフになっていく様が素晴らしかった。

最後の最後に面会に来た父親との対面が、まるで未来の自分と向き合っているかのような撮り方で、父親の顔のアップでビリー・ムーアの名前が長くクレジットされるものだから、この人が本人なのかと解り、ニクい演出だった。
"実話を元にした映画"史に残る名シーンだ。
暮色涼風

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