『ジャーマン＋雨』のよしこ並びに『ウルトラミラクルラブストーリー』の陽人がそうであったように、作中人物が儀式めいた諸条件を果たした後に急に覚醒する、この短い作品の中にもそれは見られる。
序盤、はつるが少女の挙動に笑う。その後行動を共にするが、少女は「逆上がりの練習をする」と言って先に帰ってしまう。
物語後半、はつるが笑ったように、同じ場所同じ角度で、夫たかしは中年男性の挙動に笑いを堪えきれない。男性は必死に逆上がりの練習をしている。
この形式上の反復を通し、ある瞬間たかしがはつるをおばあちゃんとして扱い、はつるはそれに応じる。周辺人物が覚醒あるいは同化するという点で上述した2作品とは厳密には異なるが、いかにも横浜聡子作といった仕上がりでありました。
