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名探偵コナン ゼロの執行人のbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
◾︎劇場版名探偵コナン第22作

【作品情報】
公開日   :2018年4月13日
作品時間  :110分
監督    :立川譲
製作会社  :小学館、読売テレビ、日本テレビ、ShoPro、東宝、トムス・エンタテインメント
アニメ制作 :トムス・エンタテインメント
脚本    :櫻井武晴
原作    :青山剛昌
音楽    :大野克夫
撮影    :野村隆
配給    :東宝
主題歌   :『零 -ZERO-』(福山雅治)
出演(声) :高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、山口勝平、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、井上和彦、大谷育江、林原めぐみ、松井菜桜子、大谷育江、古谷徹、高島雅羅、上戸彩、他

【作品概要】
『沈黙の15分』から『から紅の恋歌』まで監督を務めた静野孔文は、アニメGODZILAシリーズ等の制作もあって降板。新たにマッドハウス製怪作アニメ『デス・ビリヤード』監督で知られる立川譲が起用された。
日本の法執行機関である警察庁・検察庁・警視庁及びそれぞれの組織の公安部のパワーバランス等が鍵を握る作品。
いわゆる警察組織の階級制度等を一般常識程度に理解していれば、十分問題なくついていけるので、鯱張って構える必要はない、

【作品感想】
法を司る者たちが、個人の主観で築き上げた"正義感"という砂上の楼閣がもたらす全能感・傲慢さに目が曇り、その正当化の為の言い訳として復讐心を担ぎ上げたあげく、結局は振りかざした"正義のお題目"が枷となって犯罪を遂行しきれない物語。一体何なんだこいつらの傍若無人ぶりは……。
コナンの決め台詞に真っ向から異論を唱えることになりますが、某ジェダイマスターが「真実は各人の見方による」と言ったように、物事の見方を考えさせられる作品です。
制作陣としては、「正義(正しさ)」と「真実」は別のものであり、「真実=いつもひとつ」という前提は崩れていないようで、それは本作主題歌『零 -ZERO-』の歌詞からもわかります。
そのうえで、物事を多面的に見ること、見方によって見える景色が異なること、さらには「自分の見る景色を一つの答えとして押し通す覚悟を持つこと」についてをテーマとして描き、「真実=いつもひとつ」という前提に対する自問自答をしているようにも見えます。
とはいえ、まったく無関係・無実の人間を、証拠の捏造により犯罪者とすることは、極めつけおぞましい行為であり、「コナンという少年を本気にさせて、自分たちの思いどおりに協力させたい」がために個人の権利を歪めんとする姿勢は、まったくもって度し難い。それを実行した安室さんは、そのことに対して"覚悟完了"しているからという趣旨の発言をしていますが、イヤー、勘弁してほしい。管理社会的思考誘導待ったなしの邪悪なパターナリズム。世の中結局綺麗事じゃ済まないという教育的プロパガンダなのかな?
"安室の女"なる一大ムーブメントまで生み出した安室さんのイデオロギーには、そこまで惹きつける魅力があるということなのでしょうか?であるならば、今こそ新左翼的運動家が立ち上がるべきなのかも……いや、安室の女軍団によるアナーキズム弾圧で皆殺しにされるのかも??(錯乱)
正直感情的判断も多分に含まれている気がするので、私の乏しい理解力ではわかりません……。


個人的に最も憤慨させられる人物は、毛利小五郎の弁護を買って出た弁護士の橘境子です。スピードワゴンよろしく「こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーッ!」てな気分です。
なんせこの人、個人的復讐のために他社の人生を破滅させることを、公安側よりはるかに躊躇も容赦もなく実行してきてますからね。
彼女は(公安側が作り出した状況を利用しているに過ぎないわけですが)、苦しんでいる身内の懐に潜り込んだうえで、私怨を晴らす駒として使おうとしてきます。私はあなたたちの味方ですよー?って素知らぬ顔で。
巨悪やん。超悪辣。身の回りには決していてほしくない人種。
そんなことを思うと、本作最大の被害者は、無実の父親が逮捕されたうえに、父親を貶めんとする弁護士まで自分たちにすり寄ってきたため、精神的に疲弊した蘭ねーちゃんですよね。
その後多くのケアが必要になる人物ですが、彼女に対して何らかの救済はあったのでしょうか?おいたわしや……。
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