Inagaquilala

名探偵コナン ゼロの執行人のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.8
調べてみると、本シリーズの劇場版第1作「時計じかけの摩天楼」の興行収入はたったの11億円だった。「たった」と書いたのは、いまこのシリーズは、第20作目の「純黒の悪夢」(2016年4月公開)が63.3億円、第21作目の「から紅の恋歌」(2017年4月公開)が68.9億円と、コンスンタトに興行収入60億円を超えるビッグコンテンツになっているからだ。そもそも1994年に少年誌で始まったコミックだったのだが、ここのところの劇場版を観ていると、どうみても大人を対象にした作品としか考えられない。

それは、脚本に柏原寛司や櫻井武晴などの刑事系ドラマの脚本家を起用したり、前々作では推理小説家の大倉崇裕に脚本を依頼したり、本格的なストーリーを持ったミステリーを、このシリーズが目指してきたからだ(初期の頃には野沢尚が脚本を書いたりしている)。客層も劇場で確かめると、20代の女性が主流を占める。つまり子供頃からこのシリーズに触れてきて、そのまま大人になった人たちだ。なので、シリーズを重ねるごとに、内容も時流を反映したテーマを設定したり、謎解きも複雑になってきたりしている。

今回は、なんと冒頭にドローンが登場してきたと思ったら、内容はIoTテロだ。以前もイージス艦をめぐる物語が登場したこともあったが、IoTテロとなれば、もうこれは立派に時代の先端を行くミステリーだ。今回は脚本を「相棒」なども書いている櫻井武晴が担当しているせいか、公安警察との駆け引きも主軸として描かれており、これはもう小学生や中学生を対象としたアニメではなくなっている(もちろん興味を持って物語に入ってくる若いファンもいるだろうが)。

コミックもテレビシリーズにも疎いが、この劇場版だけは毎回たのしみにしている。今回は、サミット会場を狙った大規模爆破事件を発端に、コナンと公安警察が衝突するストーリーが展開していくが、事件は二転三転、複雑に展開していき、大人でさえ1回ではスッキリと理解できないかもしれない。しかし、たぶん、そこがこの人気シリーズの魅力であり、かなりのリピーターも生み出しているのかもしれない。とにかく、これだけ回を追うごとに多くの支持を得てきたアニメーションは珍しいし、大人でも観ごたえのある作品に、本作もなっている。
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