140字プロレス鶴見辰吾ジラ

名探偵コナン ゼロの執行人の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

3.8
GW映画12番勝負”第9戦”
※GW中に800レビューに届くのか!?

”日本のアベンジャーズコンテンツ”

見た目は子ども、頭脳は大人!
そしてサノスより強いぞ!!
※日本の興行収入でアベンジャーズ抑える事件。

もはや最新作を出せば”売れる”
日本の怪物コンテンツとなった名探偵コナン。

そして邦画版アベンジャーズコンテンツとしてその強大さを遺憾なく発揮することとなった劇場版コナンシリーズは、監督も新たにネクストステージへ。そもそもコナン評で「わざわざコナンでこの内容やらんでも・・・」というツッコミが入るわけだが、むしろ”コナンだからこぞ!”コンテンツを融合化した”邦画版アベンジャーズ”へと成長していくのではないだろうか?

「時計仕掛けの摩天楼」
「14番目の標的」
「世紀末の魔術師」
「瞳の中の暗殺者」
「天国へのカウントダウン」
初期のコナンは、作中に投じられるハリウッド映画のオマージュで邦画の弱いアクションを魅せる、邦画のコンプレックスに対してのカウンターコンテンツのように感じていた。しかし私が幼心に感銘したのは「天国へのカウントダウン」のクライマックスで披露したツインタワージャンプだった。「これはハリウッドでも実現してない!」というなぜか誇らしい感覚を受けた。

この後、コナンが人工知能と闘ったりしていくわけなのだが、邦画の制限や予算や表現力の限界の中、とことんバカでぶっ飛んだアクション映画という土俵を広げていくコナンシリーズであり、女子高生がジャンボ機を着陸させるなどというとめどないB級アクションにも余念がなく驚いた。

長い前振りであったが、コナンという媒体を使っての爽快でぶっ飛んだアクション映画と化したコナンシリーズは、今作は魅惑の安室という飛び道具を使いつつ、アニメならではの手法でリアリティテイストに味付けされたサスペンス&アクションへとステップを踏んでいた。冒頭の爆破シーンやそのニュースの中でクライマックスへの伏線をばらまき、そして会議シーンと裁判に至るまでの手続きや公安含めた組織図を図解化して説明するシーンは、正直子ども向けの域を超えていて、何ならば「これを見れば知的で偏差値が上がった気がする」コンテンツをコナンと合流させたかのようだった。これは2016年の邦画シーンを席巻した「シンゴジラ」の手法と酷似していて、ある種”日本語ラップ”のように海外のリアリティサスペンスを輸入し、売れるコンテンツと結び付け加工して製品化するという何とも日本らしいイズムによって加速した作品にように思えた。

今作は
「シンゴジラ」
「君の名は。」
「三度目の殺人」
のような邦画の抑圧をアニメという手法と、コナンという売れるコンテンツと合流させて解き放つ、ある種のクリエイター案件のようにも思えた。コナンの誇るガジェットの浮世離れさはひどいものだが、むしろ「キングスマン」シリーズの元となっているアメコミ設定のような常軌を逸した世界観があり、むしろクライマックスのとんでもアクションは、「シンゴジラ」の無人在来線爆弾を髣髴とさせるようなクレイジーさを誇っていた。

リアリティ路線×ファンタジーアクション
というコミックヒーローであるコナンであるから成し得る領域に、今後様々なクリエイターが思い思いのマジックワールドを放り込んでも良いのでは?と感じた。子ども向け→大人向け→子どもと大人の脳内を焼き切らんばかりのギミックとガジェットとサスペンスとアクションの応酬を、特に今作は大人な味、ビターに残るセリフやキャラの所作に反映させ、童心が狂ったように沸き立つ、爽快で悪趣味なアクションを堪能できる”コナン”というコンテンツの機動力を今後まだまだ発揮するだろうと期待させる一作となった。

来年はキッドが出るらしいが、わりと劇薬であり心配の種もつきないのは愛嬌だろう。