レビューは書けそうにないので、自分用のメモを書きます。一度鑑賞してから、なにかよく分からないけれどこの作品を心の中でずっと気になり続けて、3度、4度と映像を鑑賞しては、調べているうちに夜が明けました。
【概要】
監督:ルイス・ブニュエル
脚本:ルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリ
製作国:フランス
製作年:1928年
公開年:1929年
言語:サイレント映画
【『アンダルシアの犬』】
シュルレアリスムの傑作と評される、実験的ショート・フィルム。アナキズムに心酔していたブニュエルによる「映画の機能を否定した映画」。
(※アナキズム: すべての不本意で強制的な形態のヒエラルキー(段階的組織構造)に反対する政治哲学と運動。アナキズムは、国家を望ましくなく不必要で有害なものであると考える思想であり、国家の廃止を呼びかけるものとなる。無政府主義と言われることもある。)
従来の映画とは異なり、因果関係を表す物語の筋がない事がこの映画の最大の特徴である。まさに眠っている時にみる夢のような理論に従って製作されている。(ダリの代表作である『記憶の固執』では作品中央に眠っているダリの姿がある。)その夢のような理論で作品を製作するにあたり、精神医学者であるジークムント・フロイトの自由連想法や、シュルレアリスム表現の一つであるオートマティスムを参考にしている。
(※オートマティスム: 心理学用語で「筋肉性自動作用」という意味。あたかも、何か別の存在に憑依されて肉体を支配されているかのように、自分の意識とは無関係に動作を行ってしまう現象などを指す。)
(※自由連想法: ある言葉(刺激語)を与えられた時に、心に浮かぶままの自由な考えを連想していく発想法。刺激語と連想語の関連を分析し、潜在意識を顕在化する事によって心理的抑圧を解明する。)
【ルイス・ブニュエル】
スペイン出身の映画監督、脚本家、俳優。
国境を越えて多種多様な映画を撮った。
シュルレアリスム、エロティシズム作品。
【シュルレアリスム】
第一次世界大戦終結から第二次世界大戦勃発(基本的には1919年から1939年)までの戦きかんqにフランスで起こった作家アンドレ・ブルトンを中心とする文学・芸術運動。1924年にブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表した後、運動が本格的に開始した。
ブルトンはこの宣言でシュルレアリスムを「口頭、記述、その他のあらゆる方法によって、思考の真の動きを表現しようとする純粋な心的オートマティスム。理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取り」と定義。
シュルレアリスムはジークムント・フロイトの精神分析とカール・マルクスの革命思想を思想的基盤とし、無意識の探求・表出による人間の全体性の回復を目指した。
(※精神分析学: ジークムント・フロイトによって創始された人間心理の理論と治療技法の体系。精神分析は、人間には無意識の過程が存在し、人の行動は無意識によって左右されるという基本的な仮説に基づいている。)
(※ジークムント・フロイト: オーストリアの精神科医。神経病理学者を経て精神科医となり、神経症研究、自由連想法、無意識研究を行った。精神分析学の創始者として知られる。心理性的発達理論、リビドー論、幼児性欲を提唱した。シュールレアリズム運動を率いた作家たちはその美術運動の理論的基礎をフロイトに求めるなど精神分析の登場は20世紀文化史における一大事件といってもよいだろう。正常か異常かを問わず人間の心理は共通同一の原理で動いており、人の行動には無意識的な要素が作用していると考えることは、自身の合理性を疑わない19世紀の知識人を驚かせた。)