津軽系こけし

アンダルシアの犬の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

アンダルシアの犬(1928年製作の映画)
3.9
そうはならんやろ・ザムービー


シュルレアリスムの萌芽。
さあ、どう切り口を飾るか。この映画、なんのこっちゃわけの分からない作品ではあるが、第一次世界大戦が及ぼした芸術運動、シュルレアリスムの源流、ダリとブニュエルのおもしろエピソードを含めるとかなり面白く印象を飾れる作品。長文になるは必至、思い悩むがペンを走らすぞ我は。どうかお付き合いいただけたら幸い。

 

 ーシュルレアリスムってなんぞー

第一次世界大戦期に「どうして戦争は起こったのだろう」という国民全体の疑問が生んだ、前時代や伝統の否定を指す芸術運動。
シュルレアリスムを定義づけしたアンドレブルトンは、これを次のように述べている

“ 心の純粋な自動現象であり、それにもとづいて口述、記述、その他あらゆる方法を用いつつ、思考の実際上の働きを表現しようとくわだてる。理性によって行使されるどんな統制もなく、美学上ないし道徳上のどんな気づかいからもはなれた思考の書き取り ”


( ・∇・)???????????

簡単に言ってしまおう。

”ここにはこれがあるはずである”
”これするとこうなるはずである”
という現実的な因果関係を真っ向から否定するのである。シュルレアリスムを表す折に、”解剖台の上にあるミシンと蝙蝠傘”という言葉がよく引用される。もちろん、本来解剖台の上にはミシンと蝙蝠傘など置かれているはずもない。つまり、「そんなのありえないだろ」な状態を表現するのである。

もちろんこの映画でも、ツッコミどころ満載な因果関係の玉砕が何度も往来する。扉開けたらなぜか砂浜、手から蟻出る、突然のドッペルゲンガー、なんやこのけったいな映画はと思うのも当然。なぜなら監督本人ですらそう思っていたからだ。
面白い逸話がある。今作初めての上映にて舞台袖にあったブニュエルは、客席からの野次を予想して、観客に投げつける用の小石をポケットいっぱいに詰めていたらしい。いや、子供かっ!しかしながら、ブニュエルの予想に反して今作は喝采を浴び、シュルレアリスムの萌芽、そして2人の輝かしいキャリアのはじまりを飾った。

ダリはそんな観客の反応に大層退屈したらしい。いや、君らは何がしたいの??

そんな感じでシュルレアリスムに触れることのできる作品。芸術運動として調べるともっと詳しい定義がのってはいるが、本作を見る上ではこれくらいの心持ちでいいだろう。

筋金入りのシュールゴアコメディ。この言葉に尽きる。
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