Yuri

かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―のYuriのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

舞台の肥薩おれんじ鉄道は一両車で電車ではなく、気動車なんですね。私は有村架純ちゃんのファンなので、「阪急電車」から始まって「かぞくいろ」までの成長を観てきて、何だか感慨深いなぁと思ってしまいました(^_^) 線路はずっと続いていくようにみえて、突然断絶されたり、再び繋がるには膨大な時間がかかったり、修復されることがないこともあります。本作も、修平の死以前から、修平と駿也が抱える妻であり母の死だったり、節夫との関係断絶だったりと、痛みを抱えながらも、互いにそっと寄り添い手を握り前向きに生きる人々が描かれています。晶の過去は匂わせる程度にしか語られませんが、晶もそんな人間のひとりです。晶は辛い過去があるのに、ゆり先生(桜庭ななみ)の妊娠を喜んであげられたり、駿也を本気で愛しんで育てていたりと、大きな優しさに溢れた女性だと思いました(*^¬^*) 修平を失った晶と駿也は一本の不安定な線でしか繋がっておらず、節夫と暮らし始めたことで、三角形で互いを支えあう家族へと成長していきます。本当の家族でさえ、繋がりが希薄になる現代で、互いを尊敬し思いやり、寝食を共に、亡き人への愛を抑え込むことなく、慈しみ生きる。人は産まれた瞬間から失い続ける生き物なので、晶たちの生き方は無理に悲しみに逆らわず素敵だなとじんわり心が温かく、ちょっぴり切なくなりました(*^¬^*) おれんじ鉄道から望む鹿児島の景色は、鮮やかで美しいというのでなく、人々の集落と沢山の木々、穏やかに打ち寄せる海岸とシンプルで長い線路、私たちが忘れがちな懐かしい景色が優しい色合いで広がっていて、ノスタルジックな気持ちにさせられました。晶は若いから、また間違えることもあるかも知れないけれど、これからも鹿児島でこうやって生きていくんだなと思わせてくれる、風景やそれぞれの登場人物の心情にこまやかに柔らかく寄り添った優しい作品です。
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