鰹よろし

ハングマンの鰹よろしのレビュー・感想・評価

ハングマン(2017年製作の映画)
3.0
 1つの連続殺人事件とその中の1つの事件。警察にとっての数ある事件の中の1つと、被害者当事者にとっての唯一無二の事件。

 連続殺人事件を防ごうとする試みから見えてくるのは、被害者が出たことによって未然に犯行を防ぐことができる(かもしれない)というジレンマである。つまり犠牲があったからこそ救える命があるということである。

 刑事という立場もまたも同様で。彼らが捜査に用いるプロファイリングという手腕や検死という手段の確立は、成功に至るまでの幾多もの試行の積み重ね、とすれば聞こえは良いが、その実幾重もの犠牲の先にこそ立ち得る境地である。

 今まで彼らの所為で救えなかった者たちがいる中で、これから彼らのおかげで救われる者たちがいる。しかしそれは救えなかった命とその救えなかった命により救われたかもしれない命を蔑ろにしてはいないだろうか?…とこの作品は問題を投げかける。

 事件の解決とはいったい誰にとっての・・・。そしてその1つの解決が届かぬ声の産声であることを突きつけ、その事件が唯一無二となってしまった者たちを置き去りにするものではないのかと問いかけるラストは、刑事が抱えなくてはならない抱えていかなければならないジレンマを、向き合っていかなければならない苦悩と葛藤を浮き彫りにする。


 「SAW」シリーズ...「セブン」(1995)...「デス・サイト」(2004)...「マインドハンター」(2004)...「88ミニッツ」(2007)...「消えた天使」(2007)...「ブラックサイト」(2008)...「ロスト・ボディ」(2012)...
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