えいがドゥロヴァウ

縮みゆく人間のえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

縮みゆく人間(1957年製作の映画)
4.1
1957年はチャック・ベリーが大ブレイクしていた頃
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマーティンが演奏するJohnny B. Goodeは1958年
(『ミクロの決死圏』のレビューでビートルズを引き合いに出したので、同じ縮む系映画としてロック関連で合わせてみました)

原作小説を執筆したリチャード・マシスンが脚本を担当
原作は中古で買ったのですが未読なのでございます…

異なるタイミングで放射能と殺虫剤を浴びた複合作用によって全身が均等に縮み続けるという奇病に侵されたスコット
妻の献身と医者の研究も虚しく、スコットの体はひたすら縮み続ける
この「ひたすら縮み続ける」という至極シンプルなアイデアの恐怖を描ききる古き良きSFといった趣で
SF欲をたっぷり満たしてもらいました

アントマンは体が縮む代わりに昆虫並み(かそれ以上)の身体能力を獲得しますが
スコットはただの人間、縮むごとにサイズに見合った無力さを獲得します
素晴らしく作り込まれたビッグサイズな美術セットやカメラアングルによって相対的に体の縮小を表現しつつ
技術的な懸念事項となる妻との身体的接触に関しては
スコットの精神の荒廃、妻を遠ざける心理を演出することによって巧みに回避
巨大なモンスターと化した飼い猫との立ち回りでは猫の手パンチを食らうといった接触があり
その際に用いられた合成はさすがに浮いた印象ながら
活劇要素として不可欠なシーンであったように思えます

そして猫によって家の地下室に落とされたあとの孤独なサバイバル
縮んだことによって住み慣れた場所が完全に異質な世界へと変貌を遂げる様子は本作の目玉と言えるでしょう
何だか味わったことのある感覚だなと思っていたら
ゲームの「塊魂」でモノを巻き込んでいくうちに町がどんどん小さくなっていく感覚の逆バージョンですね
最初は消しゴムやらを巻き込んでいたのが大陸を巻き込むようになるのですから
あれもなかなかどうしてとんでもないスケールの振り幅を持ったゲームであります

スコットの悲劇とは彼の状況が絶望の一辺倒では決してなかったということ
医者による新薬の開発によって縮小が止まったことで希望を見出し
その時点で93センチだった彼は同じ身長でサーカスの見世物になっている美女と出会ったことによって勇気を与えられます
光があればこそ闇はより深く
結局は再び縮小が進行し絶望の淵に立たされるのですが
状況が刻一刻と悪化していくなかで希望を捨てきれず
自殺することもできないというのも彼の苦悩として描かれます

人間が縮み続けるとどうなるのか?
たとえ0.0000000001などといった極小単位(数字はテキトー)であれ
決して0にはならないということですね
いやはや、それにしても苛烈な世界
『禁断の惑星』や『地球の静止する日』に並ぶ古典SFの傑作でした
あとは『蝿男の恐怖』など
うんうん
とりあえず「傑作SF映画選」のDVDを観漁りたい…