とえ

ルームロンダリングのとえのレビュー・感想・評価

ルームロンダリング(2018年製作の映画)
3.5
軽い気持ちで観られるコメディ映画
面白かったなぁ
以前、不動産屋さんから「訳あり物件」を「訳なし物件」にする方法を聞いたことがあって、それはそれはすごく衝撃的な話だった

この映画は、私が聞いた話を、もっとソフトにして、コメディタッチで描いた作品

主人公の御子(みこ)は、不動産屋さんの叔父さん(オダジョー)に言われるまま、自殺や死亡事故のあった部屋(訳あり物件)を渡り歩いて暮らしている

そんな彼女には「お化けが見える」という特技があって、行く先々でお化けと仲良くなってしまう…

ルームロンダリングという法の抜け道をくぐる、あまり世間に知られていない特殊な世界と、お化けが見えてしまうという、こちらも特殊な世界が合わさって出来上がったコメディ

そんな特殊な世界の公約数から見えてくるのは、
死ぬ必要がないのに自殺してしまったり、事故にあったり、殺されたりした人たちの成仏できない思い

それまで御子は、他人とは違う自分の特技を嫌っていたけれど、
その特技があってこそ、彼らの成仏できない思いを知ることができ、
それが他人や社会のために役立てられることに気付く

御子だけでなく、この映画の登場人物たちはみな、とても繊細で、周りの人たちにすごく気遣いすぎるぐらい気遣って生きてるなと思った

そこがとても日本人らしいと思う

周りの人たちの視線が気になるからこそ、
幽霊が見える御子は誰とも接することなく生きているし、
自意識過剰なコスプレイヤーは反感を買ってしまうし
評価を気にし過ぎたロッカーは自殺してしまう

それはそれとして受け入れて、もっと開けっぴろげに生きたら人生楽になるのに

御子がそのことに気付いた時、
彼女自身が浄化される時なのだ

他人とうまく向き合うことができない二十歳の女の子が
この世にはいない人たちから
「人と違うことは素晴らしい個性」だと教えられ、成長していく物語だった
とえ

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