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ルームロンダリングのmoのレビュー・感想・評価

ルームロンダリング(2018年製作の映画)
4.0

『泣いちゃだめ、笑って。』


TSUTAYAが主催する「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2015」の準グランプリに輝き本作で長編初監督の片桐健滋によるハートフルコメディ。

自殺や殺人事件が起こった部屋、いわゆるワケあり物件に住み事故の履歴を帳消し(浄化)する“ルームロンダリング”を生業としている20歳の御子と、未練から成仏できずにいる幽霊達の共同生活を描く。


生きてるのに笑えない少女
自殺して後悔している男の幽霊
殺されて泣くことしかできない女の幽霊

それぞれの視点から描かれる「生」は時にしんどく、汚く、冷淡だ。
人は裏切る生き物だし、夢は大抵叶わない。
その上大した理由もないのに殺されたりして世の中は不条理なことばかりである。


しかし幽霊達はそんな世界も惜しいと言う。
お酒が飲みたい、タバコが吸いたい、セックスしたい、猫を撫でたい、認められたい、愛しい人を抱きしめたい…
当たり前が彼らの体を無慈悲に通り過ぎていき、たまに見せる寂しげな表情が生への執着を物語る。


生きていると、できることや手に入るものが多すぎて単純な喜びを忘れてしまう。
誰かの視界に映ることも、夢を追いかけることも、頬を撫ぜる風を感じることだって生きていてこその特権なのに。



ゆる〜いコメディの中に、現代に生きる私達へ監督からの「辛くても死ぬんじゃねえぞ」ってエールが垣間見えた気がした。
仕事や人間関係に疲れた心もちょっとだけ前向きにしてくれる。
日々の「当たり前」を帳消しにして「特別」に変えてくれるような、まさに心のロンダリングができた作品だった。
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