ぴのした

千と千尋の神隠しのぴのしたのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
4.4
20200628
10回近く見てるはずなのに、大人になってから映画館で見るとまた違った良さに気付かされる。

今までは面白いけど感動するような映画ではないと思ってたんだけど、今回はおにぎりを食べるシーンと、銭婆の家から飛び立つシーンで感極まって泣いてしまった。

自分が歳を取ったからか、「どんくさい」千尋の成長譚を親のような目線で見ることができた。

始めは駄々をこねてばかりで、助けてくれた釜爺に礼も言わなかったのに、最後はハクのために銭婆に頭を下げ、湯婆婆には「お世話になりました」と礼をする。「よくそんなに成長して…!」と思ってしまう。

おにぎりを食べて泣くシーンも、これまでは「おにぎり食べながら泣くなんて笑える」と思っていたが、やっとその気持ちに共感できるようになった。

今まで鈍臭いさかった千尋が、湯婆婆との対峙で泣き言を言わずに乗り切ったのだ。それはさぞ大変な心境だったはずで、緊張が解けて年相応に泣き出す姿にその心境が滲む。泣きながらでもおにぎりにがっつく姿勢も油屋で生きていくと決めた千尋の覚悟を感じてグッときた。

千尋の強かさに惚れ惚れする一方、千尋の親のクソさも改めて感じた。山道を車で爆走し、引越しの車が来るのに廃棄探検を優先し(しかも子供が率先するならわかるが、親がイケイケどんどんで、お母さんも止めないって…)、勝手に屋台の物を食べ散らかすし。そりゃ豚にもされて当然かもしれない。

その分、釜爺やリンさんの優しさが際立った。見ず知らずの他人を庇う理由などないはずなのに、自分の孫だと言って庇ったり、ヤモリの焼いたのだけで命を張って送ってくれたり。なんでそんなに優しくしてくれるのか、純粋に疑問に思った。

あとリバイバル上映をみると必ず思うのは、やはり音楽の凄さ。

千と千尋はナウシカやもののけ姫と比べるとだいぶコミカルで、心情を音楽で細かに表現するシーンが多い。階段を踏み外して落ちるシーンなんかが特に分かりやすくて、BGMの曲調が千尋の行動に合わせてコロコロ代わり、不安や緊張、恐怖、興奮が伝わってくる。

カオナシが出てくる場面は金物を叩くような音が象徴的に使われていて不安を煽る。

今までは漫然と見ていたけれど、細かい背景も気になった。ハクはなぜ魔法使いになりたかったのか(埋められた川をどうにかしたかったのか?)、ハンコを手に入れて何をするつもりだったのか、千尋はなぜ豚の中に両親がいないと分かったのか。

帰りに抜けたトンネルが、行きの赤いモルタル製とは全く違う、白いレンガ製になっているのが怖い。冒頭で千尋が入り口を振り返るとトンネルは3つあった。帰りは違うトンネルを抜け、来たときとは別の世界線に分岐したのだろうか。

千尋が振り返ろうとして思いとどまったとき、髪留めがきらりと光るのにも今回初めて気づいた。振り返ることができなくても、あそこにいた証拠はちゃんと残って輝いていると訴えているようで粋だ。

あと、思っていたよりハクの声が舌足らずな感じで残念。湯婆婆の声はいい演技だが、意外と声が若い。声優陣で一番ハマってるのはやっぱり何度見てもリンさんだなあ。

20160323
ジブリの中で一番多く見た映画。子供の頃映画館で見て両親が豚にされるシーンで怖すぎて大泣きしたのを覚えている。ここの温泉街とか湯屋はそれらしいところに行ったこともないのに夢の中で見たような景色に見えて何故か懐かしい気分になったりする。