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千と千尋の神隠しのsomaddesignのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
5.0
まさかまた映画館で観られるとは!
2001年の公開時、封切り日に吉祥寺の映画館でオールナイト上映に4時間くらい並んで観たっけ。
人生で初めて同じ映画を3度も映画館で観たくらい大好きで、DVDや副読本も買ったし、地上波放送も含めれば何度見返したか分からない。けどやっぱり映画館で見るのは格別。
この際だから毎年恒例にして、年1回夏休みあたりに日テレよろしく映画館でジブリ祭してくれないかな。


ストーリーや小ネタ、陰謀論レベルの考察から都市伝説のラストまで散々味わい尽くされて来た作品なので、あくまで今回自分が観た記録だけ。

本作の好きなポイントの一つに、音響演出の素晴らしさがあって、冒頭のアウディのエンジン音やロードノイズの臨場感からマー凄い。
釜爺のボイラー室の熱と湿気を帯びた響きも素晴らしくて、オレンジ色に照らされる釜爺とススワタリの異様と同じくらい心掴まれた。
湯屋の銭湯独特のエコーも素晴らしくて、天井の高さ・浴室の広さが伝わるし、階上の宴会場の障子一枚向こうの賑わい、一転して最上階湯婆婆の間の怖いくらいの静けさetc..
特に好きなのは沼の底駅で降りた後の田舎道。かすかに虫の音がするような自然豊かな道を、街路灯がわりの魔法のランタンがピョンピョン跳ねながら先導してくれるシーン。夜の田舎道独特の静けさの中を、あの人工物とも自然物とも付かない音をさせて跳ねるランタンの奇妙な愛らしさったら。

今回の上映はブルーレイ上映だったのか、たまたま自分が見た環境がハズレだったのか不明だが、テレビと変わらない音響ですごく残念だった。(思い出補正で過剰に素晴らしい記憶になってる可能性もあり)

銭婆婆の家の壁に「魔女宅」のキキっぽいタペストリーを発見!婆の若い頃の図画なのか、ジブリのイースターエッグなのか不明。

働いて役割を得ることは居場所を得ることと同義で、自分の価値を自分自身にも周囲にも認めさせる物語。自立して世界との関わり方を学ぶ…似た物語はいくつもあるけど、カオナシの存在がやっぱりデカイ。誰の心の中にでもある臆病で卑近な命の象徴にみえるし、人見知りで引っ込み思案、うまく人と喋れないあたり何度見ても「俺だ!」と思う。あれだけ大暴れしたカオナシが敵or悪として裁かれず、役割と居場所があれば良いだけって落としどころも素敵。

本作の北米公開〜アカデミー賞受賞に大いに貢献したジョン・ラセター。ピクサー創設メンバーの一人で、後にディズニーのチーフ・クリエティブ・オフィサーにもなる。2003年ジブリのオリジナルドキュメンタリー「ラセターさん、ありがとう」によれば、北米公開の際に宮崎監督と共にキャンペーンを回ったりして、メチャメチャ偉い人なのにイチイチいい人っぷりがすごくて、心底宮崎アニメに心酔してるのが分かる。
北米公開の記念舞台挨拶で、千尋が川に落としたピンクの靴を拾おうとして溺れかけたエピソードが実際にあった話だと知って、ジョン・ラセターが目を丸くして「マジでか!」て驚き喜んでる姿が面白いので併せて見るのがオススメ!


30本目
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