ろ

千と千尋の神隠しのろのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
5.0

「千と千尋の神隠し」が再上映されると知ったとき、海の上を走っていくあの列車が頭をよぎった。

小さい頃、カオナシが怖くて気持ち悪かった。
そして今日思ったのは、カオナシは孤独だったということだ。
自分と同じように両親も居場所もない千の後を追いかけるカオナシは、彼女と友だちになりたくて両手いっぱいの湯札やお金をくれようとする。だけど千は必要な分しか受け取らない。
食べることで寂しさを埋めようとするカオナシは千にも料理を勧めるが、それは私の欲しいものじゃないとキッパリ断られてしまう。
彼女に拒否され困惑するカオナシは、怒りながら「寂しいんだ」と叫ぶ。今まで言葉に出来なかった想いがどっと溢れ、暴れ出すこの場面がとても切ない。
それでも千は、一緒に居場所を見つけに行こうとカオナシに声を掛ける。
大切なものを失いかけた千だからこそ、その心細さに寄り添うことが出来たのかもしれない。

汚い泥にまみれ、強烈な異臭を放つ客に触れて初めてその痛みに気付く。
湯婆婆の手先と噂され、千も気を付けた方がいいと忠告されても、その人の気持ちを重んじる。
へっぴり腰でおどおどしていた千尋の心の目はどんどん磨かれていく。

こないだ読んだ「かもめのジョナサン」の中に、こんな言葉があった。
「きみの目が教えてくれることを信じてはいかんぞ。目に見えるものには、みんな限りがある。きみの心の目で見るのだ」

湯婆婆は千尋を試す、この中からお前の両親を見つけろと。
それは心の目を鍛えた千尋への、卒業試験のように思えた。

紫陽花と椿が同時に咲く不思議な世界が秘めていたのは、物事の本質を見抜く強さだった。
ろ