ヨッシー

スパイダーマン:スパイダーバースのヨッシーのレビュー・感想・評価

4.5
『アメコミ映画は新たなる次元(マルチバース)へ』

マーベルコミックのスーパーヒーロー・スパイダーマン初のアニメーション映画。

ピーター・パーカーの死後、彼の意思を継ぎ新たなスパイダーマンとなった少年マイルズ・モラレスは様々なマルチバースからやってきた5人のスパイダーマンと共にキングピンの野望に立ち向かう。

監督はボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン。

IMAX3D字幕版と2D吹き替え版の計2回鑑賞。

アカデミー賞のアニメーション賞を受賞したことで話題のアニメ版スパイダーマン。
製作をフィル・ロードとクリス・ミラーのコンビがやっているだけに非常に奇抜で挑戦的な作品となっている。

スパイダーマンといえば基本的に正体はピーター・パーカーであり、スパイダーマン=ピーター・パーカーという図式はもはや誰でも知っている。
しかし、今回はあえてそこを外してコミックの方でもマイナーなキャラクターである別のスパイダーマンであるマイルス・モラレスを主人公としており、彼がピーターからスパイダーマンを継承するオリジンストーリーとなっている。

なんといっても本作の最大の特徴は非常に独特のアニメーション表現。
まさしくコミックをそのままアニメ化したような独特のアニメーションが楽しめる作品で、その独特の演出が細かいところまで非常に練りこまれている。
また、3D表現も効果的に行かされた演出が数多くある。

これだけでも十分に革新的な作品だが、本作はそれ以上の挑戦として、様々な性質のアニメーションのキャラクターを一つの世界に登場させるという挑戦をしている。
それこそが本作で登場する様々なスパイダーマン達。
白黒の世界から来たスパイダーマン・ノワール、カートゥーンアニメの世界のスパイダーハム、そして日本の萌えアニメ的なキャラクターであるペニー・パーカー。これらの全く違うアニメーションのキャラクターが集結し、チームとなって戦うという今までにないオールスター感がある作品となっている。

もちろんスパイダーマン(&スパイダーウーマン)も魅力的なキャラで、それぞれのキャラ紹介シーンも非常に楽しく見せてくれる。
本家スパイダーマンのピーター・パーカーは今までの映画とは違いすでに長年戦い続けたベテランヒーローとしての風格や悲哀が感じられて面白い。

また、主人公のマイルスが黒人のヒーローであることを始め、様々な人種(もはや人間ですらないものも)のスパイダーマンが登場するのも“誰でもスパイダーマンになれる”というテーマと上手く合っている。
それと同時に、今まではスパイダーマン=ピーター・パーカーというイメージを変え、スパイダーマンというキャラクターの様々な可能性を広げてくれる作品でもある。

他にもスパイダーマン好きにはたまらない過去のスパイダーマン映画のオマージュも満載。
非常に情報量の多い作品なので見るたびにいろんな発見がある。

もちろんヒーロー映画らしいヒーロー達の活躍や『アベンジャーズ』的なオールスター映画としての楽しさも満載。
クライマックスのアクションシーンはとにかくド派手で各スパイダーマンの連携アクション、マイルスとキングピンのタイマンなど見所満載。

多少不満を挙げるなら、やはりこれだけのボリュームの作品だけあって詰め込みすぎ感はどうしても感じる。
主人公はあくまでマイルスだから他のスパイダーマン達の掘り下げが少し物足りなかったり(不満というよりはもっと見たかったという願望に近いかな)、悪役のプラウラーのバックストーリーが全く描かれないから彼がキングピンに従ってた理由が謎だったり、マイルスと父親の話がちょっと中途半端だったり。
細かいところだと、マイルスが透明になれる能力の原理が謎すぎる。本人が透明になれるのはいいとしてなんで服とかも消せるの?

ただ、これだけの作品を作ってくれたんだけからこんな細かい欠点はどうでもいい!
フィル・ロード&クリス・ミラーのコンビがまともな作品を作るわけないんだから(褒め言葉)。多少歪でもぶっ飛んだ作品を作ってくれるのがこのコンビでしょ。

というわけで、アニメーション映画としても、アメコミ映画としても、スパイダーマン映画としても未だ嘗てない次元へと到達した大傑作。フィル・ロード&クリス・ミラーらしい遊び心にも溢れた最高に楽しい1作。
スパイダーマンファンから初見の人まで、是非劇場で見てもらいたい1作です。
ヨッシー

ヨッシー