とりん

スパイダーマン:スパイダーバースのとりんのレビュー・感想・評価

4.5
2019年14本目(映画館6本目)

幾度となく実写、アニメと映像作品になってきたスパイダーマンの新作アニメでありながら、シリーズとしては異色作品となった今作。
何が一番大きいかというと今回はスパイダーマンが1人でないということだ。
スパイダーマンことピーターパーカーは既に存在しており、街を救うことに奔走している中、もう1人のスパイダーマンが誕生するというお話。
そこに時空の歪みが生じて、多次元からいろんなスパイダーマンが1つの世界に集結するという。
どのスパイダーマンも個性的すぎて魅力がありすぎる。

スパイダーマンといえばあまり友達がおらず、内気な少年がある日蜘蛛に噛まれたことからスパイダーマンになり、葛藤と闘いながら、街を救って成長物語である。
普通の少年が成長というところがあるから、共感度も他のヒーローものに加えて大きい。
もちろん本作にもそれは備わっている。
ただそれよりも多次元世界とのシンクロが関わってくるので非常にSF色が強くなっている。
それにいろんなスパイダーマンが飛び交うのはやはり見ていて興奮する。
ダメダメな人もいれば、クールでかっこいいし人もいるし、人ではないものもいる。

今回は親子との絆というものが大きく関わっている。
父が息子にドア越しで伝える本音の部分は思わず涙腺刺激された。
父と上手くいかないから叔父と仲良くなる、変わった環境に上手くなれなかったり、やりたいことがやれず葛藤する感じは良くできていた。

アニメとしてもかなり変わった作品で、タッチがこれまでのアニメとかなり違う。
描写もかなりアメコミタッチになっており、そこにもすごく惹きつけられた。
吹き出しや効果音が飛び交ってるのも、なんだかマンガの世界に入り込んだようで非常に良い。
スパイダーマンの目がしっかり変化して、マスクしていても表情豊かなのも個人的にはかなり好きだったところ。

そして音楽が最高に良かった。
めまぐるしく展開する映像に、今のメインストリームの音楽がしっかり合わさって、曲が始まるたびに鳥肌が立ちそうになるほど。

本作で一番強く感じたのは差別問題。
今回の主人公となるスパイダーマンは黒人であり、多数登場するスパイダーマンの中には女性もいる。
今でこそ壁は少しずつなくなってきてはいるが、女性が軽視されたり、黒人差別が完全になくなったわけではない。
それは映画業界にもしっかり出ており、ヒーローものでも今でこそワンダーウーマンやブラックパンサーなどヒット作があるが、黒人や女性がメインということはこれまでは少なかった。
それを一度に叶えたのがこれである。
極端にいえば人じゃないものもいる。
誰だってヒーローになれる、勇気さえあれば自分を変えれるという強いメッセージが込められている。
スパイダーマンシリーズを通してではあるが、観ていて勇気を元気をもらえる映画だ。
特に今作はそれがとても強く出ている。

そしてエンドロール後にあったおまけ映像、まさか続編ありか。
それならばとても楽しみにしたい。

2回目:2023.06.21 Hulu
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