ホイットモア大統領

スパイダーマン:スパイダーバースのホイットモア大統領のレビュー・感想・評価

4.4
玄田哲章に会いたくて2D吹替版で鑑賞。

まさかのR/Bな主人公に、デフォルメされたキャラデザ、アメコミであることを強調した演出と、正直全くそそられなかったんですけど、“スパイダーマン” という一点だけで観ました。

転校による孤独、マイノリティであるがゆえの苦悩、警官である父親からの期待、そして、大いなる力には大いなる責任が伴うことへの重圧…。
この辺の背景が、人種のるつぼと現政権のアメリカ、“個” を尊重・最大化する現代と上手く噛み合っていたと思う。そうなると上記の主人公、デザイン、演出全てに納得がいく。

そんな問題を抱える1人の少年が、同じマイノリティを持つスパイダーたちと行動を共にすることで、自分の存在意義と可能性に気づき、成長していく。
ここで面白いのが、それを指導するのが中年になった冴えないピーター・パーカーだということ。「何度やったって、救ったって、結果は同じだよ。」と言いたげなやる気のなさ、しかし、実力はピカイチな中年ピーターが、マイルスへの指導を通して図らずも自らも成長し、彼ら互いの決意が集約するクライマックスはかなり熱いものになっている!

さらに本作には、親子愛、兄弟愛、恋愛、師弟愛、友愛、と、様々な愛が内包されている。特に、扉1枚挟んだところでの親父の独白は、親父モノ好きにはたまらん感動シーン!
もちろん製作者サイドからも作品愛が感じられ、「バース」ということで過去のシリーズへのオマージュは、高いエンタメ性と満足度を提供してくれる。「僕/私は〇〇」で始まる自己紹介も原作を知らない俺にとってはありがたいし、『デッドプール』の「第四の壁」に近いオリジナリティを感じた。

ここまでべた褒めして、ベストムービー入ではないのはなぜか?
そりゃあんた、『スパイダーマン3』を黒歴史にしてることでしょう!いきがるマグワイア良かったじゃん!あの経験があっての成長で、MJとも仲直りできたじゃん!『スパイディー3』面白いじゃんか…。

玄田哲章のブチギレ演技はもちろん最高。