七沖

僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~の七沖のレビュー・感想・評価

3.5
〝命懸けで、宿命を超えろ。〟
唐突に熱い気持ちになりたくなって観賞。ジャンプ作品の劇場版を観たのはかなり久しぶりだ。

ヒーローを目指す少年・デクは、夏休みを利用して憧れのヒーロー・オールマイトとともにサポートアイテムの海上研究都市を訪れる。だがそこにはヴィランも入り込んでいて、彼らは市民を人質にしてオールマイトら現役ヒーローを拘束、都市のセキュリティをジャックしてしまう。デクはクラスメイトらと共に救出に向かう…というストーリー。

以前原作を4巻くらいまで読んだだけのヒロアカ初心者だが、楽しく観ることができた。何よりオールマイトの声優が三宅健太なので、完全にマイティソーでニヤニヤしながら観てしまった。ラストバトルのスピーディーにグルングルン動く構図がカッコいい。
そしてストーリー展開も「え、そうだったの⁉︎」といい意味で予想を裏切る部分もあって楽しめた。

ここから下はちょっと否定的な意見になるが……あまり熱い気持ちにはなれなかった。
少年マンガのストーリーだと主人公の成長=ハイライトになることが多いが、デクに成長という変化をつけてしまうと原作との整合性がとれなくなるのが連載中マンガ映画化の難しいところだと思う。
その点本作は、映画オリジナルでメインを張るメリッサというキャラを出しているのがうまいな、と思った。ヒーローパワーは無いけど夢はしっかり持っていてと、まさに観客が一番感情移入できるキャラ…のはずだ。
だが、このメリッサも正直言ってあまり成長が見られない。というか、最初からいい子だし、社交的だし、男子学生に有り難がられるくらい美人だし、研究者の卵としてサポートアイテムも作り上げている。長い階段を駆け上がるためにヒールを脱ぎ捨て裸足で走るガッツすら持ち合わせている。
こうなると、みんな最初からある程度成長済みで、劇場版スケールの強敵相手にいつも以上に気合を入れて打ち勝ちました、というだけの話になってしまう。それはそれでアリだが、これだとヒロアカファンでないと劇中の誰にも感情移入できず、物語に入りにくいなと感じてしまった。
傷だらけになって叫びながらヴィランに向かっていくのは確かに熱い。だが、デクにしてもオールマイトにしても、この劇場版に限っては最初から強キャラだというのも事実だ。
クラスメイトたちの特殊能力や性格をアクションで見せてくれたり、序盤に簡単なあらすじがあったりと初心者への配慮は十分にあるが、ストーリーそのものは間違いなくファン向けだ(当たり前か)。

期待値が高かったので否定的に書いてしまったが、キャラの魅力や展開の熱さは伝わってきたので、原作4巻以降もちゃんと追いかけてみたくなった。ファンになった上で観直せば、感想もまた変わってきそうだ。
七沖

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