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欲望の1000のレビュー・感想・評価

欲望(1966年製作の映画)
4.4
イキリ若手写真家の不条理なスタンド・バイ・ミー。のんきに「ナイスですねぇ!」とかゆうてた冒頭が懐かしい。

白塗り、トランシーバー、プロペラ、静止した観客、ジェフ・ベックの折れたネック。コルタサル原作なのでさもありなんといったところだが、アーバナイズされているのもあって、だいぶと村上春樹っぽかった。形式としてはサスペンスなのだが、クリティカルなストレートは与えられず、いらんジャブばっかり続く。もちろん、この冗長さはこの物語にとってよいことだ。
それにしても、見えないものが見えている、あるいは見えないものを見えるということにしたラストが、この絶妙に気味の悪い話をうまく落としていて見事だった。画面外でテニスの音がフェードインするところの芸が細かすぎて拍手しかけたのに、当人がフェードアウトするところがダサすぎて笑っちゃった。

いま訳しているモンロー・ビアズリーは美的観点に取り憑かれる話として紹介していたが、その解釈はイマイチで、『欲望』はアーティストというよりもジャーナリストとしてのパラノイアを描いた話だととるべきだろう(このジャケットも、キャッチーだがミスリードだ)。実際、主人公はきらびやかなコマーシャル写真を取るのにうんざりしていて、もっと生々しい現実を切り取ったストレートフォトグラフィに惹かれている。あんな精度のイマイチな白黒写真があれやこれに見えてしまうところに喜劇があるし、錯覚が錯覚とも言い切れないところに悲劇がある。