八木

名探偵ピカチュウの八木のレビュー・感想・評価

名探偵ピカチュウ(2019年製作の映画)
2.6
 ポケモンというゲームは、人間がボールにポケモンをぶちこんで持ち歩いてはトレーナーが出合い頭に気分で殺し合わせたり、牙や毒や超能力で人間を殺せそうなのに街には入らず草むらに大量に生息していてかつ基本的に無害だったりと、ゲームを設計するために出来上がった恐ろしく都合の良い世界観であるため、実写にあたって序盤に『確かにその昔気分で殺し合わせたりしてたけど、そうでない世界観の街がすでに誕生しているからこまけえことは気にすんな』というナレーションを入れて、様々な映画的不都合を処理しておりまして、これがとても安心につながっていました。
 だいたいのことはピカチュウやコダックやその他ポケモンが可愛かったり、そこにいて生活の香りを感じるという体験自体に価値のある映画でして、それ以外のつくりについてはどの程度のひっかかりを感じたかなどは、ポケモンリテラシーによってこの映画の評価が変わってくると思われます。

 例えば、僕が感じた引っ掛かりの一つは、主人公とピカチュウの間にパートナーシップが生まれるまでが結構グダグダしていたように思ったことです。今作のピカチュウにはある秘密がありますので、その部分を香らせることで、『普通じゃない』親近感を主人公が持たざるを得なくなるような部分があるはずなのですが、ピンチに陥ったピカチュウに対して思い入れを明確に叫ぶシーンの時点では「そんなしっかり通じ合う理由用意してたっけな…?」と疑問を感じました。
 また、ストーリー上ピカチュウと主人公のパートナーシップが生きまくって問題を解決する場面も少ないように感じましたし、ピカチュウのポケモン性を説明する場面・その活躍のシーンも少なかったように感じたので、アクション的に食い足りないと僕は感じてしまいました。その割に、バリヤードのポケモン性はストーリーと関係ないのいガッチリ説明して生きる場面があったり、バランスよくわかんないです。
 「パートナーシップが薄く」「あったとしてもそれがあんまり生きない」という、ポケモン的な骨がわりかし脆いという部分で映画として大きなダメージであると感じたのが僕の見落としとかなんとかである可能性もあります。ただ、この映画に関しては、上記の通りこのピカチュウには秘密があって、もし主人公がこのピカチュウとつながりを感じることができていたとしても、それは「ポケモンという共存の対象に対して」ではなく、このピカチュウ単体になってしまうというのが、あんまり主人公にとっての救いになってないように見えるんですよね。これがどう前向きに解釈しても、マイナスイメージを拭えないところなのでした。

 ヒロインのちょっと田舎臭い記者の女の子ちゃんとのラブ部分も、出会いの冷たさから考えると展開が急すぎるように感じました。いや、もう、ひと目見てハートマークになってるくらい適当で良かったのでは。
 その他、博士の部屋にノーセキュリティーで簡単に行き来できる説明がないとか、報道局にもフラっと行けてしまったりだとか、だいたいのことを「ピカチュウふっさふさで可愛い~」で流せてしまう作品なのにもかかわらず、積み上がった違和感が常に崩壊直前まで放置されているのも確かだと思います。

 でもなー、ピカチュウ可愛かったし、ピカチュウ可愛く見せることに命かけてたっぽくて、結果出てるからなあ。楽しかった、てことでよいと思った。
八木

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