たなかじろうまる

アンダー・ザ・ウォーターのたなかじろうまるのレビュー・感想・評価

アンダー・ザ・ウォーター(2017年製作の映画)
4.5
未体験ゾーンの映画たち2018 ①

もはや年始の恒例となった各国の一癖も二癖もある映画を揃いに揃えた映画祭。
1作目にして今年最も有望作と個人的に思う作品を鑑賞しました。
もうね、こういうジャンル大好きなんですよね。


QEDAという、体を分裂させ時間遡行を可能にする力を持つ主人公が、秘密裏に水に覆われた世界に生じる奇病から娘を助け出すために過去に自分を送ります。しかし、万事うまく行くと思いきや、突如自分からの音信が途絶えてしまう、といったところで物語の幕が開きます。

動きとしては乏しく、静かすぎる印象がこの映画を通して感じられました。
その要因の1つは映画の明度にあると思われます。
映画の持つコントラストが概ね白と黒の2色です。それが結果として映画全体に立ち込めるどこか悲壮な世界観を顕著に表現できているんですよね。
そして、そんな世界観に見劣りしないのがキャラクター。その中でも、僕は主人公を推したいですね。
そのキャラクターは、顔の表情にあまり変化ありません。意図的に無表情を貫いており、それがすごいいい味を醸しだしてるんですよ。
どういうことかというと、一瞬だけ感情的になるシーンがほんの僅かだけ見られるわけです。映画の大半を無表情で貫いてるが故に、満を持して訪れる感情描写に心を打たれるわけです。
言葉で語りきれぬ素晴らしさ、ぜひ映画を見て確認していただきたいです。

そして、後半に提示されるメッセージもなかなかに深い。
「もし過去を自由に変えれるなら?」
「私は変えない。もし簡単に変えられるなら、今あるこの瞬間は何なの?」
といった台詞があります。
描写自体はありきたりですが、この掛け合いは映画の中でも屈指の名シーンに思えました。
未来は自らの手で選択することができる。
そんなメッセージを投げかけられた後に繰り広げられる展開、世界観ーーもし観る機会があるのなら是非観て欲しい、個人的な傑作でした。