如月

志乃ちゃんは自分の名前が言えないの如月のレビュー・感想・評価

3.8
すぐに投稿出来なかったのですが、プレミア上映会&舞台挨拶に行ってきました。

原作未読。メインキャストの親世代ゆえ保護者目線。客席は若い方で埋め尽くされていると思いきや、意外と同世代が多かった印象。

問題のない十代は存在しないと監督がおっしゃったように、十代は誰もがコンプレックスのかたまり。物語の舞台は、90年代初めころの美しい風景に囲まれた地方の海辺の街。ドラマチックな出来事が起こるわけではないけれど、不器用な3人が苦悩しもがく姿が瑞々しく描かれています。女優さんの可愛いところだけを切り取ったのではない作品で、格好良くないところもひっくるめて、必死に生きようとする姿が愛おしい。


高校入学は新たな生活に不安を抱きつつも希望と期待でいっぱいの時期。教室後方が窓になっていて二方向から光が差して明るい。そんな明るい場所で苦しい気持ちで高校生活のスタートを切った主人公。担任の先生の救いようのないアドバイスが、悩み苦しむ人に追い打ちをかけていて、出会いの大切さを痛感。大人になっても無自覚に人を傷つけることがあるのだと刻みたい。けれどもこのエピソードは、最終的ににきっちりと呼応していて(回収されて)主人公が苦悩の根源を自覚し一歩踏み出す助けになっている。心憎い脚本です。

海辺のロケーションがとても良かった。短いシーンだが季節感ある鳥や虫の鳴き声も心地よく、波の音も効果的なBGM。古典的とも言える砂浜のあるあるシーンも、懐かしくて切なくて眩しかった。

橋の路上ライブシーンは、光の使い方がMVのようで心掴まれ、監督の魔法にかかった気分に。一見相反するような、2人の少女の美しく儚げなのにエネルギッシュなところがスクリーンいっぱいに表現されていて素敵だった。やや残念に感じたのは、お二人の前髪が長くて顔の表情が見えにくかったところ。(これはこれで、ビジュアルを原作に寄せる、陰影を強調するなどの狙いがあったのかも)#3.5㎜ タグの使い方違うのわかってます。

渡辺哲さんの引きのフレームは、台詞無しで市井の人物を醸し出すいぶし銀の存在感。さり気ないひとコマからも、良質の邦画が次々作られ公開されるムーブメントを感じる。1980年前後の生まれの若い監督の作品が面白い。機会を与えてくれたご縁にも感謝。