小

志乃ちゃんは自分の名前が言えないの小のレビュー・感想・評価

4.3
ベタな展開のありがちな青春ドラマだなあと思いながら観ていたら、自分の想像が覆されていたことに気づかず、ラストのシーンでなるほど、と。

高校1年女子、1人は吃音症の志乃、もう1人はミュージシャンになりたいけど音痴の加代。いろいろあって2人はバンドを組み少しずつ変わっていくが、志乃をからかった同じクラスの男子で、誰からもウザがれるお調子者の菊地が強引にメンバー入りすると…。

鈍感な自分がベタなドラマと思い込んだことから、甘いと思っていた物語がラストで反転した。加代の覚悟の意味がわかり、それにこたえた志乃のあのシーンが違ったものとして甦り、強めのメッセージが頭の中に浮かんできた。

2人のような悩みのない人がこの物語を描いたとすれば、ちょっと厳しすぎるメッセージだと感じただろうけれど、原作の同名コミックは作者の実体験がもとになっていて、これは当事者の実感のひとつなのだと腑に落ちた。吃音症でないとしても、誰でも心に傷はあるはずで、このメッセージは普遍的だと思った。

執拗な吃音症の演技に正直あまりいい気持ちはしないけれど、リアルな演技に対するリアルな自分の気持ちが、志乃ちゃんが自分の名前が言えなくなるように仕向けてしまっているのだと気づかされもする。

青春ドラマの爽やかな感動があるわけでなく、こうすべきだというわかりやすい解答があるわけでもない。でも身につまされ、驚かされ、考えさせられる、他の青春ドラマとは一線を画す味わい深い映画だと思う。

●物語(50%×4.5):2.25
・映画では誉め言葉のまんまといっぱい食わされた感(自分だけ?)。脚本は『百円の恋』の足立紳さん。やっぱ、侮れないわー。ダメな人をクライマックスの見せ場にもっていく話の作り方が上手いのかもしれない。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・文化祭のシーン、観直したい。次は泣きそう。志乃ちゃんの演技はまさに熱演でイイのだけれど、個人的には加代ちゃんの覚悟が印象に残った。ただ、ちょっと歌が上手過ぎかも。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・陰影とか構図とか普通にイイかな。よくわからんけど。
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