Kogarath

志乃ちゃんは自分の名前が言えないのKogarathのレビュー・感想・評価

4.3
吃音を抱える少女の、痛々しくも輝ける青春映画。

自分も主人公の志乃と同じ吃音持ちであり学生時代は特に酷かったので、観ている間はいろいろ思い出して感情移入どころか痛くて痛くてしょうがなかった。
自己紹介が死ぬほどイヤでいつも心臓バクバクだったり、うまく話せなくてバカにされたり、「落ち着いて喋れば大丈夫だよ~」なんて分かった風なこと言われたり、全部あきらめて存在を消すように殻にこもったり…。
そんな日々が懐かしく思えるのは、自分を受け入れることができたから。そして、内面を見てくれる人がたくさんいると知ったから。
だからこそ志乃が加代と出会い親交を深めていく過程は胸が熱くなったし、海辺の景色と相まってキラキラと眩しかった。ミッシェルの"世界の終わり"があんなに爽やかに響くとは。
それでいて、友情パワーで吃音を克服できました、って方向には持って行かないところも良かった。手を差し伸べてくれる人はいても、結局のところ自分が変わるしかない。劇中歌のように"心と心が今はもう通わない"としても、これから踏み出すための大事な経験になったと思う。そんなことを感じさせるラストも良かったな。それでいいんだよ、と肩をポンと叩きたくなる。

主演の南沙良、素晴らしい熱演だった。
言葉が出ない時はこうなるよねって仕草、鼻水混じりの嗚咽、上手くはないけど真っ直ぐで無垢な歌声。全力ぶりが胸に刺さる。今後の活躍も楽しみです。
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