紅蓮亭血飛沫

黒い箱のアリスの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

黒い箱のアリス(2017年製作の映画)
2.2

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、ある男が家内で背後から謎の人物に襲われてしまう。
エクス・マキナのように山奥に佇む芸術めいた家に住み、人の言葉を話す機器を付けた犬を“ママ”と呼ぶ主人公・アリスの右腕には、パワードスーツのような義手がはめられていた・・・。
更に、思うように義手を動かせない苛立ちから家の外に出ると巨大な黒い正方形を見つけ・・・。

冒頭の時点でたくさんの興味を引く要素が展開され、瞬く間に本作への期待値はうなぎ登り。
一体どんな物語が展開されるのか・・・と固唾を呑んで見始めると、意外や意外。
まさかの“タイムスリップ”に行き着きます。

全編に渡って漂う不穏な雰囲気を際立たせるように、本作はBGMやSEも極度に減らし、兎に角物静かに、されど自分の筆跡で書かれたメモを見つけたり、相手を殺せと命じられる展開等を盛り込んだ事で場面の強弱がハッキリとしています。
独特の世界観を見事に構築しているのですが、いかんせん、長い。
体感時間が非常に長く感じられます。
1.5倍速で見ても支障ないぐらい、全編に渡ってのんびり、悪く言えば冗長気味です。
ハッキリとした展開が目立つ一方、100分もある映画としては尺と反比例するように、舐め回すかのようにそのシーンを時間をかけて映したりする傾向が多々見受けられました。
的確に睡魔を呼び覚まそうとしてくるため、注意が必要かと。

ですが、先程も言ったように全編通して描かれる不穏な世界観と興味を引く要素、まさかのタイムスリップ等々、それ単体で十分勝負できる強みがあるのも本作の特徴です。
過去のトラウマから心を閉ざしている少女が、不条理な世界を舞台に奮闘する人間ドラマは嫌いではありませんでしたし、ラストシーンの余韻も味わい深かったです。
結局解明されてない謎(そもそもこの黒い箱は何なのか、何故あの犬を母と呼んでいるのか、アリスの父がエリカに接触していた事の意味は何なのか等)もいくつかありますが、それらを含めて鑑賞しながらキャラクターと世界観を考察していく楽しみがありました。

義手を思うように動かせないのは集中力や思う力が足りないから、と描写されていた通り、あの黒い箱を起動できてタイムスリップできたのは、あの時のアリス自身による大きな感情の動き(あのメッセージ通り兄妹を殺せなかった事、父と犬を殺された事)によって発現・起動できたと解釈できますし。
決して万人向けの映画とはいえませんが、物静かでダークな世界観を題材にした映画としてはいい線行ってたと思います。
・・・ですがやはり、100分は長すぎましたね。