Inagaquilala

アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

4.1
「ヒャッハー!」シリーズ(日本で勝手につけたタイトルなのであまり使いたくはないが、とりあえずわかりやすいので)のフィリップ・ラショーが監督、脚本、主演を務めた最新作。これまでの「世界の果てまでヒャッハー!」や「真夜中のパリでヒャッハー!」では、ニコラ・ブナム(昨年、日本でも「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」が公開)と共同監督だったが、今回はフィリップ・ラショーが単独で監督している。そのせいか、よりドラマ性が増し、登場人物たちが入り乱れる群像劇ではなく、それぞれのキャラクターが密度濃く絡むコメディが展開する。とは言っても、あいかわらず、設定やギャグはキレており、自ら主役を演じるフィリツプ・ラショーの面目躍如の作品となっている。とにかく上映時間中、ずっと笑いぱなしだった。

まず設定が絶妙。主人公は、依頼人のアリバイを完璧につくる会社「アリバイ・ドット・コム」を経営。不倫などにはもってこいの便利な会社で、このアリバイづくりがまずおかしい。冒頭でその実際のアリバイづくりの例を小気味よく見せるのだが、これがどれも抱腹絶倒。出だしから笑いが止まらない。今回は、ここに主人公の恋愛模様が絡むのだが、このペットの犬を介した出会いも絶妙。とにかくシーンシーンがとことんよく考えられているのだ。そのあたりがフィリツプ・ラショーのすごいところ。途中で突然出てくるシマウマのエピソードも、最後にはピタリと伏線として回収され、見事というしかない。

主人公の恋愛模様も、「アリバイ・ドット・コム」の仕事と絡んで展開していくし、登場人物すべてがコメディとして連なっていくところも、なるほどと納得させられる。今回はカンヌが舞台だけに、リゾート感もたっぷり、こころから笑い飛ばせる作品になっている。とにかく、これほどずっと笑いっぱなしの作品というのも最近は少ないので、フィリップ・ラショーの存在は貴重だ。今回は単独での監督のため、前2作の「ヒャッハー!」シリーズのような「ハングオーバー」的な展開は少し薄まったが、密度の濃いコメディドラマをつくる監督として、新たに名乗り出たとも言える。

いまや世界が期待する素晴らしいコメディをつくる映画監督。でも、この面白さを言葉で伝えるのはひどく難しい。とにかく観てみなければわからないだろうな。フィリップ・ラショーは、つい最近、日本の「シティハンター」を原作とした作品をつくることを自らのSNSで発表したばかり。こちらも期待だ。
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