アズマロルヴァケル

スキン・コレクターのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

スキン・コレクター(2017年製作の映画)
3.3
アイデアは面白いけど中身は惜しい映画

・感想

内容に関しては前半は日本版の予告編やあらすじで分かるようにひとりの主人公が老化する皮膚を綺麗にしようと、生きた女性の皮膚を奪うというスリラー。後半はその主人公が敵側だった隣人の女性とLGBT的な展開になり、悪役である研究所の医者から逃避行するというものでした。なので、全編通して主人公が他人の女性の皮膚を奪うわけではない。

映画は全編通して赤や緑、白といった明るい色の照明や衣装を使った派手な演出が多いです。そのため、キラが人を殺して皮膚を奪うシーンはスタイリッシュでポップだし、良くも悪くも恐ろしさがありました。特にキラが居酒屋の女性店主を地下室で殺して皮膚を剥いで自分に貼りつけるシーンはホラー・スリラー映画としてはキラの狂気が伝わってきて良かったのではないかと思いました。

それと、主人公であるキラはある理由から一時的に記憶喪失になっているので、サラが他人の皮膚を奪うと同時に自分の記憶を取り戻そうとするというサスペンス要素があったり、隣人の女性ソフィアと交流を深めて百合になるという恋愛の要素もあり、脚本は頑張って作ってる感じは伝わって来ました。

ただ、キラの描写やバックボーンが多いせいか、事実上後半で敵側になるソフィアがどうしてキラに好意を持ったか、或いはどうしてクライマックスでキラを窮地から救ったのかがとても描写が弱く、LGBT要素のある映画としてはかなり物足りない感じでした。映画自体は主人公であるキラの主観をメインにしたような作りではあったのですが、少なくともソフィアが敵側の人間であることは前半でキラがクラブに行くところを尾行するシーンでちょっとソフィアが敵側なのは読めるので、出来ればソフィアの葛藤や苦悩を描いたりすればストーリーに深みが増したと思いますね。

ということで、スリラー映画、そしてLGBT映画としてはまあまあ観れるカナダ映画ですが、同じく『未体験ゾーンの映画たち2018』で上映されていた『ドント・イット』よりかはジャケット詐欺はマシであり、かつ内容はかなり把握できるものとなっていました。だが、『ドント・イット』に比べると脚本が惜しいし、説明や人物描写が足りてないし、女優がトップレスになったりヌードになったりするシーンがあり、エロさはあったものの、グロ描写や性的な描写は控えめなのでホラー・スリラーファンには物足りないなぁと感じるかも。

※ちなみに、この映画のジャケットはジャケット詐欺なんだけど、キラは斧持ってないし、監禁された女性は全裸で監禁されていたので色々とジャケットが惜しいです。